上の二枚の写真。どこが違うか判るでしょうか?
細い錫メッキ線の引き回しが違います。
アンプ作りの基本。電位の定まらない所は作らない。
遊んでいる金属は全てシャシに繋ぎます。
真空管ソケットの中心部の金属ピンも例外では有りません。
ソケット横の4Pラグの取り付け部に落とします。
ヒーターラインも同じ。ヤハリ片側をシャシに落とし電位を決めます。
ヒーター端子と金属ピン。どちらもシャシに落とすのだからと、何も考えないと上の写真の配線に。
でもこれは間違い。正しくは下の写真。
上の配線ですと金属ピンからヒーターに繋がり其処からアースへ。
ヒーターピンとアースの間が共通インピーダンスに成ってしまいます。
パワーアンプぐらいですと、この辺を間違えてもハムは引きませんが、ヘッドアンプなんかでこんな配線をしちゃうと訳の判らないハムに悩まされます。
アンプを自作する人の大半がパワーアンプばかり。
確かにシャシの事を考えるとプリは大変ですが、微小信号の扱い方を覚えるにはフォノイコライザーを作らないと、腕は上がりません。
ノンNFのフォノイコライザーをノンハムで組む。
これが出来てから、パーツの音の違いを騒いでも遅くは有りません。
スピーカー端子の裏側。今回使うアウトプットトランスは出力マッチングインピーダンスが1種類だけ。
一般に多い4,8,16Ωの出力端子は使えません。
左右chで4個の端子が有ればOK。
今までは二組の端子を使ったのですが、1個で済ませました(コストダウンです、笑)。
細い線が繋がっているのがスピーカーのマイナス側。トランスの二次側は別回路。トランスの基本です。
信号ラインのアースラインには接続せずに、その場でシャシへ落とします。
単に電位を決める配線ですから繋がっていればOK。太い配線は必要有りません(電流は流れないのです)。
此処で問題。僕のアンプはNFを掛けていませんので、此れでOKですが、トランスの二次側からNFを掛ける場合は、二次側も増幅回路の一部に成りますので、此処へのアースはNG。
NF回路全体を見てアース場所を決めなければ成りません。
こう考えると、NF専用巻き線の付いているトランスが欲しくなりますね。
シャシ内部です。手前の二個のトランスはB回路のチョークトランスです。
チョークインプットでリップルを取るには、二段チョークは必須です。
リップルを打ち消してくれるプッシュブルでは許せるリップルが、シングルアンプでは、其の侭出力に出て来ます。
チョークインプットを採用する場合は、チョークインプットでの使用を許しているチョークを使って下さい。
また、EIコアのチョークですとリッケージフラックス(漏洩磁束)が多く、他のパーツへの影響が無視出来ません(真空管は磁力に弱いです)。
今回はカットコアを使い、取り付け位置にも気を使っています。
初めてやる場合は、出来るだけ大きなシャシを使い、慣れるに従い小型シャシにチャレンジした方が無難です。
左中央の4ピンコネクターは電源コネクター。電源ケーブルが取り外せないと、何かと不便。アンプを運ぶ時や場所の変更なんかの時に重宝します。
4ピンを使ったのは電源ケーブルにスッタカード接続をする為です。
詳しくは http://hayashilab.syuriken.jp/audengenkeiburu01.htm で。
4芯ケーブルに高級品は要りません。極普通の4芯キャプタイヤでOKです。
電源SWは両切りタイプです。万が一の漏電を考えますと重要です。
ヒューズは使わずブレーカーを使います。
白いパネルに取り付けられた四角いソケット2個。
タイマーとリレーのソケット。整流管にタイムラグを持たせて動作させるものです。
詳しくは http://hayashilab.syuriken.jp/auhl234.htm で。
その下の真空管ソケットが整流管用。
右のソケット4個が増幅段用です。
ブロックケミコンを使いませんから、内部のパーツの数は、単純な回路の割には結構な数に成ります。
もうこの時点で、ラグのどのピンにはどの配線が行くかは決まっています。
配線を引きながら考えると、綺麗な配線は望めません。配線が綺麗と汚いとで音が違うのかと聞かれると、正しい引き回しさえしていれば、変わらないと思います。
でも、何かで修理や改造、を考えますと汚くは作りたくないですし、オシャレは下着からとも言いますので。
良いアンプを作る時の基本です。
見えない所も絶対に手抜きしない。人間ケチですから、あそこを手抜きしなかったんだから此処も。で、其処も手抜きしなかったんだからこちらも。
結果手抜きの無いアンプが出来上がります。
逆の場合。
此処は見えないからイイヤ。じゃ此処も平気だな。ンジャー面倒だから此処も抜いちまえ。最後には手抜きだらけの無様なアンプが。
機械加工屋さんって結構面白く、普段精密加工をしている人は、誤差が大きな加工を頼んでもキッチリ作ってしまいます。
逆に誤差の大きな物ばかり作っている加工屋さんは、どんなに高精度の加工機械を使っても精度の高い製品は作れません。
これが手癖なのです。
僕の作っている物には、高精度の物と、それ程要求されていない物が混在。
でも精度を重用としない物も出来るだけの精度で作っています。
でないと、イザ高精度と成った時に作れなくなってしまうのです。
加工屋さん(加工工場)。高精度で少量生産、高価格。低精度で大量生産、低価格。
完全に会社そのものが、そのどちらかに分かれています。
今年に成って元旦を含め、3日しか休んでいない。今日は休むぞ、って思っても、家には遊び道具がナーーンもない(汗)。
結局店へ来てアンプを作っている。遊びと仕事の区別の付かなくなった人間の末路です。
で、写真。電源トランス。特注品ですがパーツの共用化は僕の店でも重要課題。品質を安定させる事とアフターの取り易さの為で有って、コストダウンが第一目標の様などこかのメーカーとは意味が違います。
今回使った電源トランスは店で使っている300Bシングル、2chアンプと同じ品。
規格は
☆ H-001
プライマリー 100V
セカンダリー 500-0-500V 100mA
5V 4A
6,3V 2A
6,3V 2A
カットコア 縦型 端子タイプ
と言う物です。
最初の H-001 と言うのは、トランスメーカーと僕との間で決めた型番。これさえ言えば、同じ物が出来てくる寸法です。
B電流値が少ない様に思われるかも知れませんが、この規格はコンデンサーインプットでの規格ですので、チョークインプットで使いますので、余裕はたっぷりです。
市販のトランスで間に合わせようとするのでしたら、360V巻き線でコンデンサーインプット(整流管の場合、シリコンならもう少し低め)で、略同じ電圧が取れます。
アウトプットトランス。この様な姿ですから使うのには苦労します。最近のお気に入り。
でも、この辺のチョイスは使う(作る)人の好みの分かれる部分です。
お好きなトランスを使って下さい。
只、雑誌等での試聴記は丸っ切り当てに出来ません。なまじあの様な記事を読むと先入観を持ってしまい、悪い結果に成り易いです。
雑誌が嘘をついているとは言いません。あれはあくまでもその試聴場所での限られた条件での出来事です。周りの条件が変わったら、一切当てに出来ません。
知りたければ、買って試すのが一番の早道です。
トランスや真空管の音質など、使用条件でコロコロと変わってしまうものなのです。
『あのパーツはこんな音がするよ。』なんて平気で言えるのは、経験が少ないからで、経験を積む程、一概に言えない状況に沢山遭遇します。
結果、簡単には言えなくなるものです。
一刀両断出来るのは、まだまだの人か、もの凄い(僕はまだです)経験を積んでいるかのどちらかです。
トランスの付け終わった全体。
かなり重く成りました。
でも、まだシャシの中にチョークを2個付ける様なんですよね(汗)。
アルマイトから帰って来たシャシを仮組み立て。アルマイト液で、ネジ穴がきつく成っている時が多々有りますので、要注意です。
程々でしたらネジを入れれば治りますが、本当にきつくなっている穴が有ったなら、タップで軽くさらいます。
着色はモノトーンの2色。パンダ見たいとも言える様で・・・・・。
シャシを組んでから、細かなパーツを付けるのは結構難しい。電源SW等の内側からナットを締めるパーツが難しいのです。シャシの枠が邪魔に成ってスパナを入れられません。
天板だけの状態で、細かなパーツは全て取り付け、その後枠に取り付けます。
電源SW。ナットの向きを見て下さい。六角がきちっと正面を向いています。別に斜めだからと言って、音に影響が有る訳では有りません。僕の手癖です。
同じなら適当で良いじゃないかと言う人には、ご馳走をバケツで食べるのですかと言いたい。綺麗な食器に盛られてもバケツに入れられても、味は変わりません。
所詮遊びです。この辺の遊び心が無いと、不思議と良いアンプは出来ません。
この様なSWにはナットが2個付いています。表のナットは正面を向けて固定。裏のナットをスパナで締めるのです。こうすれば、パネルへ傷を付けるのも防げます。
表のナットをラジペンで締め付けるなど以ての外です。
アルマイトは絶縁体です。電気を通しません。
シャシ周りの金属は、全て電気的に結合されなければNGです。
ガリガリとアルマイトを剥がして等結構見かけますが、見えない所のお洒落が出来ていません。
此処は、迷わず菊座ワッシャーの採用です。金属に食い込み電気的に結合しますし、ネジの緩みも防止します。
と言って、全てのネジにつける必要は有りません。各金属へ一箇所で十分です。
入力端子周りです。試聴用ですのでピン、レモ両方が使える様にしました。
ピン端子の六角も正面を向けます。
52S切り板
5 × 402 × 192 1枚 表面の目は長手方向
5 × 107 × 382 1枚 表面の目は長手方向
5 × 302 × 402 1枚
5 × 62 × 97 2枚 表面の目は長手方向
5 × 37 × 382 1枚 表面の目は長手方向
5 × 62 × 382 1枚 表面の目は長手方向
10 × 86 × 281 2枚 表面の目は長手方向
10 × 81 × 402 1枚 表面の目は長手方向
10 × 86 × 402 1枚 表面の目は長手方向
6063平角棒
5 × 20 × 4000 1本
さてさて、この材料は・・・?
今回のアンプシャシに使う材料一式です。只の箱でしたら、6枚の板を削れば終了ですが、トランスのサイズが兎に角大きい。
更にケースに入っていない。ケースを特注すると兎に角高い。
トランスをシャシの中に入れるとシャシの厚みが尋常ではなくなる。
で、トランスの入る部分だけ高さの違うシャシを設計しました。
結果、これだけの板が必要に。
切削に掛かる時間も結構な時間に成りそう。
でも、出来上がったアンプの姿が僕の頭の中には・・・。
さあ、その予想どうりの姿に成れるかどうか?
メーカーはこの様な時は、モックアップを作って検討するのですが、少量生産のアンプにそんな事をしたら、コストアップも甚だしく成ってしまいます。
試作機がモックアップを兼ねて、お客様に渡すアンプは手直しをして、と言うのが僕流の流れです。
でも、最後は自分で使うのですから、かっこ良くしたいですよね。
5 × 402 × 192 1枚 表面の目は長手方向
5 × 107 × 382 1枚 表面の目は長手方向
5 × 302 × 402 1枚
5 × 62 × 97 2枚 表面の目は長手方向
5 × 37 × 382 1枚 表面の目は長手方向
5 × 62 × 382 1枚 表面の目は長手方向
10 × 86 × 281 2枚 表面の目は長手方向
10 × 81 × 402 1枚 表面の目は長手方向
10 × 86 × 402 1枚 表面の目は長手方向
6063平角棒
5 × 20 × 4000 1本
さてさて、この材料は・・・?
今回のアンプシャシに使う材料一式です。只の箱でしたら、6枚の板を削れば終了ですが、トランスのサイズが兎に角大きい。
更にケースに入っていない。ケースを特注すると兎に角高い。
トランスをシャシの中に入れるとシャシの厚みが尋常ではなくなる。
で、トランスの入る部分だけ高さの違うシャシを設計しました。
結果、これだけの板が必要に。
切削に掛かる時間も結構な時間に成りそう。
でも、出来上がったアンプの姿が僕の頭の中には・・・。
さあ、その予想どうりの姿に成れるかどうか?
メーカーはこの様な時は、モックアップを作って検討するのですが、少量生産のアンプにそんな事をしたら、コストアップも甚だしく成ってしまいます。
試作機がモックアップを兼ねて、お客様に渡すアンプは手直しをして、と言うのが僕流の流れです。
でも、最後は自分で使うのですから、かっこ良くしたいですよね。
回路図です。威張れる回路図では有りません。本当に基本回路。でもこれでもっと凝った回路のアンプに負けないのですから、オーディオは面白いです。
こんな回路ですから、組みミスも無いですし、故障した時も原因を見つけるのはとても簡単です。
パーツの数が少ないですので、少々高価なパーツも迷わずに使えます。もっともうたい文句も凄く価格も高くても良いパーツと言えないのがナントモハヤ・・・・。
電源はチョークインプット(注1)ですので、B巻き線は500Vです。チョークインプットでリップルフィルターを作りますと、整流後の電圧はB巻き線の略80%の電圧が出ます。今回は略400Vです。
コンデンサーインプット(注2)の場合は理論上は1.4倍ですが、実際には1.2倍程度になる場合が多いです。この辺は整流管を使うのか、シリコン整流かでも変わりますし、インプットのコンデンサー容量でかなりの変化が有ります。
初段管のプレート電圧が異様に低いですが間違いでは有りません。僕のアンプの特徴です。
理由は企業秘密(笑)。最もこの辺は出来上がってからの若干の調整は行います。とりあえずCR結合で作りますが、発注して有るトランスが入荷したらトランスドライブ、左右逆相動作に組み替えます。
注1)整流器(ダイオード、整流管)の後にチョークが直接入り、その後にコンデンサーが入ります。その為リップルフィルターとしてはコンデンサーインプットよりも劣る為、その後にもリップルフィルターを必要とします。長所は何と言ってもレギュレーションの優れている点。今回の電源トランスにレギュレーションの良いカットコアを使っていますので、その特徴を生かす為のチョークインプットの採用です。
再生音の違いは、是非実験してみて下さい。
注2)整流器(ダイオード、整流管)のすぐ後にコンデンサーが入りその後にチョークへ入る回路。一般のメーカー製のアンプは皆この方式です。リップルフィルターとしては良い働きですが、電源のレギュレーションはチョークインプットに適いません。整流器直後のコンデンサー容量で出力電圧が変わってきます。整流器に直熱真空管を使った場合はこのコンデンサー容量に上限が決まっていますので注意が必要です。
内部だけを考えて図面をひきますと、表からのデザインが?に成ったりして大慌てに成ります。
内部に入って表からは見えない部品はどかし、真空管を立てて実際に近い感じを確認。でも、初心者程この表面にばかり気を使って内部の配置が?と言うのを見かけます。
あくまでもアンプは陰の功労者。特にラックに収めると手前からの景色だけに成ります。
良いアンプを作りたければ、内部配置の方を優先しないと、結局愛用アンプには成りません。メーカー製のアンプもこの辺は悩みどころの様で、パネルデザインを見ると設計者と営業部門の争いが垣間見えます。
僕のところは同じ人間がやっているので、あくまでも電気的配置優先。でもかっこも良い方がいいなー・・・・。