平成19年4月18日開店。店主の日々の日記です。
オーバーホール中のプリアンプ。昨日から動作チェックに入っています。
真空管を新しい物へ交換。即電源ON・・・・・。

ブッブーです。今回交換した真空管、現在では入手不能な貴重管。僕が入手したのは30年程度前。
此処迄年月が経っていますと、新車だけど30年間動かさなかった車を起動する時と同じです。
整流管を抜き、高圧を遮断。その状態で電源ON。
素早くヒーター電圧のチェック(素早くが大切)。
正常でしたら此の侭で1時間以上通電(今回は2時間行いました)。
車で言うとアイドリングでシッカリと各部へオイルを回す。

真空管の場合は陰極の活性化です。
もう一度ヒーター電圧のチェックと各陰極の点灯具合を見ます。
全てOKでしたら、電源OFF。
整流管を挿し電源ON。
今度も素早く各真空管に流れるアイドリング電流値をチェック。

この手順を踏んでいる人は非常に少ないのが現状です。兎に角時間が掛かる。

現状のアンプの説明がまだでしたね。


アンプ本体と電源。普通は別電源と考えるでしょうが違います。
電源部。


所が本体にも・・。

本体電源部の大きな穴はケミコンを外した跡。

此のアンプ、本体内蔵の電源だけで正常動作を出来るのです。
じゃあ、外の電源は・・・・・・。

当時、オプションだった強化電源です。
此の電源を付けたら、本体内部の電源はヒーター回路とフラット段の高圧回路だけを供給。
イコライザーの高圧電流は別電源から供給する仕組みです。

信号回路には一切手を触れませんし、真空管の動作点も弄りません。
でも音質は比べ物にならない。電源の重要性を理解出来るオプション電源だったのです。

と言う事で、昨日は別電源を接続しないでテストをしました。
つまりフラット段だけのテスト。見事に一発合格。

今日は別電源を繋いでイコライザー段のテストです。

強化電源に見える3個のオイルコンと4本のブロックケミコン。外すと穴が開くので付けた侭ですが内部の配線は全て切断して有ります。
現在の良質なケミコンへ全て交換。
40年前はオイルコンの音質は有難かったのですが、現在は完全に邪魔ものです。

2~3時間後の追記。
イコライザー段の動作チェックです。と言っても最初から信号を入れてオシロで波形を見る。迄にやらなければいけないテスト。
6本の真空管のアイドリング電流値を目標値(現代の動作点)に合わせる。
調整は此の3本の抵抗値。


前のブログでアップした物と同じ写真です。片ch3本ですので両chで6本に成ります。
で、結果は6本共交換(涙)。
この辺を調整した方ならお判りでしょうが、一発で成功は可也難しい(シーソー感覚です)。
要は1本交換して理想値に合わせた。その後次の抵抗値も変えると、先に合わせた数値が変化するのです。
電卓では出せない数値なのです。永年の経験と勘がモノを言う世界です。

苦労1時間少々。目標値に合わせられました。
頭はクラクラ。これで前に書いた片ch1個のケミコン追加が出来ます。
何処へ押し込もう・・・・?

続きは明日。

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オーバーホール中のプリアンプ。ヤット完成が見えて来ました。
お預かりしたのが9月11日ですからまもなく2ヶ月。

中途半端な仕事はしたくないので、時間はタップリと頂きました。要は『ピンキーさんの好きな様にやってね・・。』

実はお預かりする迄、昔僕が使っていたオールトランス結合とは思ってもいなかったので、結構大騒ぎ。

取り敢えずパーツ交換の終わった中身です。

電源部。穴が開いていますが本来は此処にブロックケミコンが付いていました。外した物を数個測定しましたがヤハリ年波には勝てず・・・。

増幅部分。




トランスと真空管ソケットが近いので、その奥のCR類を半田付けをするのが大変。本当に気を遣わないと配線被覆を半田鏝が溶かします。
ソケットは全数交換しました。

デカップリング回路。


狭い空間にチューブラコンを押し込みます。写真に見える3本の抵抗器は、動作チェック後に変更も有り得ますので、見える様に取り付けます。
本当はもう1個のケミコンを入れたいのですがスペースで悩んでいます(元々は付いていなかったケミコンなので、この状態でも正常動作をしますが音的に入れたい)。

此処で即動作チェックに入るとつまらないミスを犯しやすく成ります。組んだ時の記憶が邪魔をするのです。
頭を完全にリセット。と言う事で今日の残りは庭弄り(笑)。

実は2~3週間前にとんでもない大手メーカーに招待をされまして工場見学(開発センターも)、その後工場の技術者の方々(開発者も同席)と懇談会。
で、その時の僕の発言。
『お客さんに急がれて時には、じゃあ手抜きして良いんですね。と答えるんです。』って笑いながら言いました。
その時技術の責任者。
『それ貰った(笑)。』
きっと彼も上司から急がされて困っていたんでしょうね。

冗談では無く、通常よりも早く済ませるって不可能です。手抜きしか方法は有りません。

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やっと本格的な組み立てに入ったオーバーホールのプリアンプ。
要は今迄は準備だったのです。
単に部品の交換ならこんな手は掛かりませんが、ブロックケミコンをチューブラコンへ交換。
真空管の動作点も、現状から最新の動作点へ変更。

その他色々と・・・・・・。

今回梃子摺ったのが真空管ソケットの交換。
取り敢えず片チャンネルが完成したフラット段。


配線は簡単なんだけど、新しいソケットを取り付けるのに四苦八苦。



この様な取り付けネジ位置なので、下側のナットが中々嵌らない。
おかしいなー・・。前はこんなに梃子摺らなかった筈。僕の腕が落ちたのか・・?

原因はコイツ。


ソケットの高さが全然違う。シャシ外部なら良かったんだけど、内部にかなりせり出すんですね。
つまりソケットの出っ張りが邪魔に成って、ナットをその位置に抑えられない。
無茶苦茶苦労しまして無事に装着。完全に手探り仕事。更にこいつは手前にトランスが有って・・・・・・。

昔、散々やったバイク弄りが役立ちました。見えない所にナットを止める。手探りしか有りません。
で、面白いのは手探りをする時には目を開けていては出来ません。指先に全神経を集中させるには目からの情報は邪魔なのです。
無意識に目を閉じて指先の感触に全神経を集中させる。

残り7個かーー・・。


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先日アップしました小さなカラー。結局もう1個必要に成り旋盤で・・。

使い方は写真で・・。


大きな丸穴が2個。此処にはブロックケミコンが付いていました。




写真でお判りの様に3個封入して有ります。此れを単品のチューブラコンに替える訳です。
ブロックケミコンは端子タイプですのでラグ板が要りません。対してチューブラコンは両端からリード線が出ているだけですから、取り付けラグが必要に成ります。
要は単純に交換と言う訳には行かないのです。

そこで問題。

取り付ける板には強度を稼ぐ為に片側へ折り返しを作って有ります。
コイツにラグ板がゴチンコしてしまうのです。

つい最近オーバーホールをした同型のアンプはトランス結合では無かったので、トランス側にラグを伸ばせばOKだったのですが、こいつは直ぐ隣にトランスが有る。
トランスを避けると折り返し部分にゴッチンコ。
要は折り返し部分にラグが接触しない様に持ち上げてしまえ。
と言うのがカラーを作った理由です。

ある意味、同型と思っていても仕様がまちまちなので・・・・・・(僕の責任)。



実は裏側の反対ch。でっかいVRとゴチンコしてテンヤワンヤ・・・・・。

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遅々として進まないプリアンプのオーバーホール。
毎日進めてはいるんですが、昔みたいに集中力が維持できない。つまりチョクチョク珈琲タイム。
頭が疲れるのです。この状態で進めると碌な事が有りません。

で、チョイどうしようか・・・?

最近オーバーホールをしたアンプと同型なのですが、オールトランス結合なので空間が無いのです。
ブロックケミコンを外してチューブラコンにする。此れが・・・・・。
どうしてもゴチンコする所が出来た。何とかクリアーしないと完成しない。

そんな訳で・・・・・。


暫くぶりの旋盤作業。10φのアルミ丸棒を10mmに切断。中心に3,25mmの穴を開けます。
さてどう使うかはこの後のアップを見て下さい。


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兎に角分解を始めました。40年経ったアンプの半田は兎に角溶け難い。要は変質をしているのです。

場所によって、なんとか半田を溶かすかニッパーでチョキンか考えながら進めます。







無条件で交換する部品の一つが真空管ソケット。
真空管ソケットは消耗部品です。

昔々の話。お客様の友人の方、マッキンの240を使っていました。何度も買った店に修理に出しても直ぐに同じ症状が出ます。ピンキーさん見てくれない?

当時は今ほど忙しく無かったので、引き受けました。
見て直ぐに判ったのが真空管ソケットの不良。買ったお店では、ソケットへ接点復活材を噴霧するだけで済ませていたみたいなのです。
まあ、交換をしたくないのは判るんですけどね。と言うのは当時のマランツ、マッキン共にソケットをネジ止めでは無くリベット止めだったんですね。
ソケットは永久に使えると思っていたのかと・・・・・(笑)。
リューターでリベットを飛ばし新しいソケットをきちんとネジ止め。
其れ迄の不調は再発しなく成りました。

まあそんな経験を何度もしていますので、ソケットは無条件交換部品なのです。

先日アップしました不良ケミコン。片chに1個使っていますからもう1個外して測定。
こちらは3個とも40%容量抜けを起こしていました。
抵抗とコンデンサーは全て交換します。

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僕がこの仕事を始めて43年。と言う事は40年以上前に作ったアンプが皆動いている。
一言で言えばオーバークオリティ。

と言っても、よる年波には敵いません。かなり前に受けていたプリアンプのオーバーホール。此処続けて2台オーバーホールをしましたので、頭の中はオーバーホールモード。
こんな時には続けてするのが一番です。

今回のアンプ、どの年代の物かは判っていましたが、今現在のオーナーの方は中古で購入。アレッ、誰から行ったアンプだったかな?(最近、昔の事は忘れています、汗)。

3週間位前に持って来て貰いました。まず最初に驚いたのが『重い』。
この型はこんなに重くはない筈。ひょっとして・・・・・・・・。

更にオプションの強化電源も付いています。


本当に最初の強化電源でオイルコンまで装備。

ひょっとして・・・・・・・・。
中身を見たら・・・・。


ハイ、僕が使っていたアンプです。当時としては最高のチューン済み。
本来は無かったオールトランス結合(だから中身がギュウギュウ)。
LCRイコライザーも入っています。

最初はノーマルで使い、其の後に強化電源を付け、OPTだけは取り付けられる様に成っていたシャシに、無理やりトランスを詰め込んだ仕様。
ハイ、性能的には問題ありません。只中がキツイので作業がし難い。

でも、40年以上使われて来たやつれは外観に一切有りません。
大切に使われて来たのが判ります。

ヤバいなー・・。コイツが戻って来ちゃったらトコトンやるしか無いじゃない(まあ全てこの調子なんですが)。

最初は徹底的な現状のチェック。各部の電圧と電流を測定します。このくらい古いと一度の測定では安心できません。
一晩連続通電をして、昨夜と今朝の違いをチェック。

回路も、僕用と言う事で何か弄って有んじゃないかなー・・・・。
有りましたよ。LPとSPのイコライザーカーブの切り替えSW。
当時はSP盤に嵌っていましたから・・・・・・。

今のオーナーの方には不必要(要るなら連絡を下さい、笑)。
このSWを外すと信号ラインが単純に成ります。

回路と定数も現物から図面を起こす。
その定数を元に現在の動作点(真空管の)へ変更するには定数をどう変えれば良いかの計算。
チョイ余計な急ぎ仕事が入ったのも有りますが、此れを全て準備するのに2週間近く掛かりました。
此の準備が大切なのです。此れをしないで一発勝負をしてしまうとまずNG。
逆にこの仕事をシッカリとすれば、作業中の迷いはなく成ります。

写真に写っているブロックケミコン。3個封入して有りますが1個は完全に抜けていました。
40年ですから仕方ありません。逆に2個は正常と言う方が凄い。

このケミコン、デカップリングに使っています。
通常デカップリングが抜けますと発信するのが普通。
コイツが発振しなかったのはデカップリング回路が通常のシリーズ接続では無くパラレル接続だった為です(僕のアンプは全てパラレル回路です)。

昔別れた彼女との再開です。さてさて・・・・・・。



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僕の作るプリアンプ。市販品では絶対に有り得ないシャシの剛性。
天底板は5mm厚、周りは10mm厚のアルミ合金。

散々試作しました。丸っ切り同じ回路で同じパーツ、配線の引き回しも同じ。で、高強度のシャシを使ったアンプの絶対的な勝利。
高強度と言っても鉄板、真鍮、ステンレス、全てNG。アルミ合金のある種類だけが合格。
この辺を突き詰めた人っているのですかねー・・・・・・。

そんなシャシを使いだしたのは30年近く前。沢山のアンプを作りました。全て好結果。

その様な訳ですので、このスタイルを変えるつもりは有りません。
でも・・・・・。
外部から供給されるパーツは必ず生産中止が付きまといます。中止に成っても其れ以上の新型が出れば文句は無いのですが、今回は困った。
40周年記念アンプにも使ったVR。
30年近く愛用したと思います。未だにこれに勝るVRを見ていません(常識外れの高額パーツです)。
発売された当時はこのVRを使っているのが高級アンプのシンボルでした。
あのVRは儲けよりも会社としてシンボルの製品だったと思います。
売れなく成っても20年近くカタログに載っていたのはメーカーとしての意地だったのでは・・・・。
老兵は静かに・・・・・・・・・・。

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