図面の前で腕組み。と言ってもこの図面を仕上げるのにもかなりの時間が・・・・。
アームを作りたいと思った一番の理由は、ピアノのアタック音とオーケストラのフォルテッシモ。残念ながらこの部分はCDに敵わないと思っていました。
デジタルの一番得意な部分なのです。兎に角音量が大きい程歪が少なくなるのですから。
この部分だけ、レコードの再生音はあやふやに成るんですね。
原因はレコードに有るのか、再生系なのか?
少なくともCDは此処をクリアーする。と言う事はアンプ、スピーカーには問題が無い。
残るはプレーヤー。
実は、市販のアームに疑問を持ったのはこの部分なのです。
極標準的なアーム、カートリッジ、ターンテーブルの関係です。
アーム軸受け部の黒丸。アームを上下に振る為の水平軸受けの部分。
一般のアームはこの高さがアームパイプの中心部。
何も問題を感じませんか?
ターンテーブルが回転をしないのでしたら、此れで何の問題も有りません。
問題はターンテーブルの回転。
下の力の関係図。レコードが回転するとアームは図面左方向に引かれます。
この時問題に成るのがxの距離。
軸受け部よりx低い位置を左に引かれるんですね。
中学校で習いましたよね、力のモーメント。
軸受けの下を左に引かれると、赤の矢印方向の回転力が発生します。
この回転方向、針圧が軽くなる方向なのです。
引かれる力が常に一定でしたら、其の分チョット余計に針圧を掛ければ済むのですが・・・・・・・。
レコードがカートリッジを引く力。カッティングレベルで変ってきます。
つまり、アタック音やフォルテッシモの様なカッティングレベルの大きな時ほど引く力は強くなるのですね。
さあ、問題です。一番針圧がシッカリしないといけない大音量時に針圧が抜けちゃうんです。
チョット実験してみましょう。万が一針を折っても構わないカートリッジと、万が一傷をつけても良いレコードを用意します(笑)。
針圧を1g位に設定。
アームの上がる最大位置までアームを上げ、手を離します。
ターンテーブルが廻っていないのでしたら、ストンとレコード盤の上に不時着。
ターンテーブルを廻して同じ実験。
ビックリする程トーンアームは跳ね上がって来ます。
つまり此れが、カートリッジが引かれて針圧の抜ける現象なんです。
この現象をなくする方法。簡単です、水平軸受けを黒丸の位置から赤丸の位置に移動すれば全て解決。
と言っても凄く難しい問題も有るんです。
まず、アームの高さ調整は行えません。高さを変えたら軸受け部の位置がレコード盤面と一致しなく成ります。
結果カートリッジの高さの違いは、カートリッジとシェルの間にスペーサーを挟んでの調整に成ります。
更に大きな問題点。水平軸受けに対してアーム部の重心位置が高過ぎてしまうんですね。結果、上下方向への動きが非常に不安定なアームに成るのです。
この解決には、アームウェイトの位置をグーンと下げてバランスを取りました。
出来上がったアームを見ただけでは判らない苦心が、あちこちに有るのです。
更に現状のアームの大問題。アームの機械強度不足を誤魔化す為にヘッドの重量を無茶苦茶に上げてしまったのですね。
結果レコードの反り、偏芯に弱く、再生音も鈍い音に成ってしまっています。
機械強度を十分に稼ぎ、アームは先端に行く程軽くする。
解決策はテーパー加工。
このテーパー加工が一番の問題点だったのです。
どうすればこの形状に切削出来るのか?
メーカーでしたらキャスティングですね。
でも、キャスティングの金属、響きが汚いです。
切削加工以外は考えなかったのです。
正直、フライスを手にして直ぐにアームを作るなんて無謀な計画でした。
QRKが無くなり、ターンテーブルを先に作らなければいけない状態。
ターンテーブルの製作でフライスの腕が上って・・・・・・。
この後でしたので、アームが作れたのです。
散々悩みながらの切削でした。
試作1本目のアームがこの写真の物です。
強度試験、なんて言いながら、足で踏んで試験。曲がりました(汗)。
勿論曲げる前に音出しです。
レコードには、ピアノのアタックもオーケストラのフォルテッシモもきちんとカッティングされている。
再生出来なかったのは再生系の問題。とハッキリと判りました。
完成後、試聴に来たおなじみさん。
其の方全員の声。
『レコードは凄い、SPUは凄い。』
誰も僕のアームを話題にしなかったのです。
でも、其れが僕にとっての一番の褒め言葉だったのですが・・・・。
続く
アームを作りたいと思った一番の理由は、ピアノのアタック音とオーケストラのフォルテッシモ。残念ながらこの部分はCDに敵わないと思っていました。
デジタルの一番得意な部分なのです。兎に角音量が大きい程歪が少なくなるのですから。
この部分だけ、レコードの再生音はあやふやに成るんですね。
原因はレコードに有るのか、再生系なのか?
少なくともCDは此処をクリアーする。と言う事はアンプ、スピーカーには問題が無い。
残るはプレーヤー。
実は、市販のアームに疑問を持ったのはこの部分なのです。
極標準的なアーム、カートリッジ、ターンテーブルの関係です。
アーム軸受け部の黒丸。アームを上下に振る為の水平軸受けの部分。
一般のアームはこの高さがアームパイプの中心部。
何も問題を感じませんか?
ターンテーブルが回転をしないのでしたら、此れで何の問題も有りません。
問題はターンテーブルの回転。
下の力の関係図。レコードが回転するとアームは図面左方向に引かれます。
この時問題に成るのがxの距離。
軸受け部よりx低い位置を左に引かれるんですね。
中学校で習いましたよね、力のモーメント。
軸受けの下を左に引かれると、赤の矢印方向の回転力が発生します。
この回転方向、針圧が軽くなる方向なのです。
引かれる力が常に一定でしたら、其の分チョット余計に針圧を掛ければ済むのですが・・・・・・・。
レコードがカートリッジを引く力。カッティングレベルで変ってきます。
つまり、アタック音やフォルテッシモの様なカッティングレベルの大きな時ほど引く力は強くなるのですね。
さあ、問題です。一番針圧がシッカリしないといけない大音量時に針圧が抜けちゃうんです。
チョット実験してみましょう。万が一針を折っても構わないカートリッジと、万が一傷をつけても良いレコードを用意します(笑)。
針圧を1g位に設定。
アームの上がる最大位置までアームを上げ、手を離します。
ターンテーブルが廻っていないのでしたら、ストンとレコード盤の上に不時着。
ターンテーブルを廻して同じ実験。
ビックリする程トーンアームは跳ね上がって来ます。
つまり此れが、カートリッジが引かれて針圧の抜ける現象なんです。
この現象をなくする方法。簡単です、水平軸受けを黒丸の位置から赤丸の位置に移動すれば全て解決。
と言っても凄く難しい問題も有るんです。
まず、アームの高さ調整は行えません。高さを変えたら軸受け部の位置がレコード盤面と一致しなく成ります。
結果カートリッジの高さの違いは、カートリッジとシェルの間にスペーサーを挟んでの調整に成ります。
更に大きな問題点。水平軸受けに対してアーム部の重心位置が高過ぎてしまうんですね。結果、上下方向への動きが非常に不安定なアームに成るのです。
この解決には、アームウェイトの位置をグーンと下げてバランスを取りました。
出来上がったアームを見ただけでは判らない苦心が、あちこちに有るのです。
更に現状のアームの大問題。アームの機械強度不足を誤魔化す為にヘッドの重量を無茶苦茶に上げてしまったのですね。
結果レコードの反り、偏芯に弱く、再生音も鈍い音に成ってしまっています。
機械強度を十分に稼ぎ、アームは先端に行く程軽くする。
解決策はテーパー加工。
このテーパー加工が一番の問題点だったのです。
どうすればこの形状に切削出来るのか?
メーカーでしたらキャスティングですね。
でも、キャスティングの金属、響きが汚いです。
切削加工以外は考えなかったのです。
正直、フライスを手にして直ぐにアームを作るなんて無謀な計画でした。
QRKが無くなり、ターンテーブルを先に作らなければいけない状態。
ターンテーブルの製作でフライスの腕が上って・・・・・・。
この後でしたので、アームが作れたのです。
散々悩みながらの切削でした。
試作1本目のアームがこの写真の物です。
強度試験、なんて言いながら、足で踏んで試験。曲がりました(汗)。
勿論曲げる前に音出しです。
レコードには、ピアノのアタックもオーケストラのフォルテッシモもきちんとカッティングされている。
再生出来なかったのは再生系の問題。とハッキリと判りました。
完成後、試聴に来たおなじみさん。
其の方全員の声。
『レコードは凄い、SPUは凄い。』
誰も僕のアームを話題にしなかったのです。
でも、其れが僕にとっての一番の褒め言葉だったのですが・・・・。
続く
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