平成19年4月18日開店。店主の日々の日記です。
先のアップ後、特殊工具で軸受けを圧入。穴に対して垂直に入れないと大変な事に成ります。
使っている軸受は、本来無潤滑での使用が出来るんですね。無潤滑って食品関係の機械なんかによく使われます。潤滑油が飛ぶと拙いわけなんですよ。

で、無潤滑で使えるくせに耐油性もバッチリ。無潤滑で使える素材を潤滑して使うのですから耐久性は言うまでもなく・・・(古い機械のチェックをしても摩耗は見られません)。

シャフトを挿し込んだ写真。


気付きましたかねー・・?
縦横のシャフト、縦でしたら下側、横シャフトは左側。
小さな穴が見えると思います。
この穴はシャフトの中心に開けた縦穴と繋がっています。
つまりシャフトのエンド側のオイル通路なんですね。
この穴が無いと、行き止まりの穴の中のオイルは交換が得られなくて劣化を早めるのです。ほんの僅かずつですがオイルの循環を計れますのでオイルの痛みが少なく成り軸受け周りの摩耗も最小に抑えられるのです。
縦シャフトの下側は、ターンテーブルの軸受けで実績の有るダブルボール受けに成っています。フリクションが最少で摩耗も無い。万が一摩耗をしても市販の鋼球と交換すればOKです(でも、一旦バラすと鋼球の向きが変わってしまうので、摩耗点の位置が変わり新品に交換したのと同じに成ります)。

此処で、一旦シャフトを抜き取りオイルシールの圧入です。
バイクを散々弄って来ましたので、オイルシールの圧入は楽な作業。初めてですと梃子摺るかなー・・。

オイルシールの穴にタップリとグリスを塗り、もう一度シャフトを挿し込みます。
まず縦シャフト。穴の中にギヤを入れて置かないと・・・・・。
ユックリとシャフトを挿し込みギヤの穴に通し下まで押し込みます。
下端は鋼球で受けていますので、カチッと止まります。
その状態でギヤの上下の位置を調整。
軸受にフランジが有ったのを覚えていますか?
あのフランジとギヤの上端を極少の隙間に調整(シックネスゲージを使用)。
その位置にギヤを固定。
次に横シャフト、同じくギヤを穴に入れてジックリと挿し込みます。
今回の穴は押さえがなにも有りません。最後まで挿し込むと穴のエンドにゴチンコ。

本体からシャフトの出る長さは図面から判りますので(21mm)、其処まで引き出し、ギヤはシャフトが出ている側の軸受けフランジに当てます。この位置でこのギヤも固定。
出来上がり。


オイル穴が見えますね。

此れでやっと両側にアクリルの窓を取り付けられます。


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猛烈な暑さの所為でなかなか進まなかったギヤボックスの加工。
数日前に切削が略終わり(残りはプーリーのみ)今日から組み立てです。

組み立てはエアコンの聴いた室内で出来ますのでニコニコ。

そんな訳で・・・・。


右側の保護シールの貼って有るアルミブロックが素材です。
コイツを5方向からの穴加工(穴加工が無いのは1面のみ)。

その5面の穴はそれぞれが影響し合うので位置の精度を出すのに凄く神経を使います。
要は6面の内、どの面とどの面を基準に進めるか(縦寸法と横寸法の為)が肝。
此れの選び方を間違えるとオーマイゴット。

散々やって来ましたのでこの辺はお手の物です。
一番きついのは真ん中の貫通穴(角に丸みの有る四角形)。
板厚が50mm有りますので、可成り削りがいが有ります。

で、内部に組み込むパーツ一式。



左から、オイルシールが2個、鋼球が2個、特殊樹脂製の軸受けが4個、ウォームギヤ1組、シャフトが2本。
ただ単に組んじゃうと狙った性能は出ません。ギヤの取り付け位置に細心の注意を払います。

今の所いませんが、中身に興味を持ちばらしちゃいますと、絶対に初期性能は出ません。
オイルの入れ替え時に外すネジ以外は絶対に緩めないで下さい。



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昼飯も喰わずに頑張りました(笑)。


モーターを一回り小型にし、モーターを樹脂でフローティング。更にオイルシールをフリクションの少ない物へ交換。先にも書きましたがモーターへ連結する横シャフトの長さを短縮。書いちゃうとこれだけなんですけど結構な手数が掛かっています。

30分程前に回り始めました。今迄とはウソッと言う位静かに成っています。
でも、オイルシールを交換して横シャフトを短縮したと言う事はギヤを外しています。

同じに組んだつもりでも、微妙に当たる歯面の位置が変わるのですね。
結果、30分の運転でオイルは汚れて来ました。

此の侭あと1時間位運転して1度目のオイル交換。一晩運転して2度目のオイル交換。
その後24時間運転後に3度目のオイル交換。
その後に納品です。


エーーーーー。

例のシャフトの直線性を出す治具。
後の治具は新型ギヤボックス用。
手前は旧型のギヤボックス用です。旧型を作っていた頃にはこの治具が有りませんでした。
その為にエライ苦労をして位置出しをしていたのです。

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僕がギヤボックスを作り出してから20年近く成ります。当初僕のお客様はアイドラードライブの方が殆ど。つまりS/N比が良く無いプレーヤーだったのです(音は良いですけどね)。

其れからの移行には皆さん満足して頂けました。
で、HPなんぞを作ってしまったものですから新規のお客様が増えて来ました。その方たちのプレーヤーはDDが殆どだったのです。
そう成りますとギヤボックスのS/Nの悪さを指摘され出したのです。もう其の頃にはレコードプレーヤーに使えるシンクロナスモーターなど作られていませんでした。

モーター其の物の振動が多かったのです。

其処から僕の苦労が始まりました。兎に角S/N比を上げる事。何度ものマイナーチェンジを繰り返しヤット今の状態に成りました。

僕の装置にバッテリー電源を導入したのも60Hzでのテストをしたかったのが原因です。
当時60Hz地域からの制作依頼が何件か有り、こちらのテストではOK。現地では・・・・?
と言う事が起きたのです。此処で60Hzでテストをしたい。と言う事で高額な60Hz電源も購入しました(此の電源、その物の騒音が大きく使いものに成らず埃を被っています、汗)。

結局今のバッテリー電源でのテストをしたのです。色々と原因が見つかりました(内容はヒミツ、笑)。

そんなこんなの繰り返しで静かなギヤボックスに変わって行ったのです。

で・・・・・・。


只今の作業台の上。一番初期型のギヤボックスです。此れを最新の物と同じS/N比にしちゃえ・・。
写真からお判りかと思うのですが、モーターは底板プレートに乗っているだけで取り付いていません。位置出しの確認です。


こんな具合にモーターは簡単に外れます。


位置出しが完璧に出来ましたので、ギヤボックス本体も外し、底板プレートへモーター取り付け用のネジ穴を開けます(勿論シッカリとした図面を引きました)。

最初期のギヤボックスは底プレートの長さが短く、かと言って新しい底プレートを作りますとコストの面でお客様に迷惑を掛けます。
と言う事でシャフトの長さを短くする事で解決させました。

これからフライス盤でネジ穴加工です。

この底板、幅が130有りますのでバイスには咥えられません(限界が85mm)。
そう成ると板の位置出しの方がネジ加工よりも時間が掛かります。でも位置出しが狂ったら今迄の苦労が水の泡。ジックリと納得する迄位置出しをします。

今日中には回り出す予定です。

追記。シンクロナスモーター、50Hzと60Hzでは出力が変わります(60Hzの方が小さい)。此れにも苦労しました。一番振動の少ない小型モーターですと60Hzでは回らないのです。
現在は改良されて60Hz地域でも小型モーターを使用出来る様になりました。これも60Hzでのテストが出来る様に成ったからです。

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カップリングが1日遅れて入荷(オリエンタル目)。
カップリングも単に組むだけでは駄目です。スラスト方向のクリアランスを微妙に取るのですね。
つまりカップリングとモーター内のベアリングにスラスト荷重を掛けないのです。
スラスト荷重はギヤボックス内の軸受けで全て受ける構造です。

この調整をしないとモーター内のベアリングに余計な荷重を掛けて、寿命の低下と騒音発生を招きます。

で、大切な事。初期馴染みで微妙に狂うんですよ(狂わない個体の方が多い)。2割程度の個体が微妙な狂いを起こします。

で・・・・・・。



慣らし運転です。経験上、数時間で初期狂いは出るのですが、用心で数十時間運転をします。
で、ご存知と思いますがウォームギヤ、互いの歯車がこすれ合って動くのですね。此のこすれ合うのは普通のギヤ(平歯車、傘歯車等)の比では有りません。

結果、初期運転で出る微細な金属粉も多いのです。
その為に、初期馴らし中に数回のオイル交換。此れを行ってから初めて納品に成ります。



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僕のミスで中断ですけど、カップリングが来たら直ぐに動かせるようにします(明日入荷予定)。

一応、モーターシャフトとギヤボックスシャフトの結合にはフレキシブルカップリングを使っています。正直、昔はカップリングを信用し過ぎていました。フレキシブルなんだから・・・・・。

で、モーターブラケットの精度を上げたらカップリングの問題が出て来ました。フレキシブルと言ってもお互いのシャフトの直線性を上げないと微細な振動の発生源に成ってしまうのです。

ある意味、一番大切な工程。



治具を使ってお互いのシャフトの直線性を上げる作業です。
と言って長孔が必要な程の誤差は論外です。
ボルトに対して若干大き目の取り付け穴との隙間での調整です。

何度もしている作業ですが気を使います。
オット、治具部のアップ。



二つ割りのアルミブロックの中心に、シャフト径にピッタリの溝が彫って有ります。
このブロックをボルトで締め上げれば二本のシャフトの直線性は嫌でも出る構造です。

で、締め上げて、ギヤボックスとモーターの取り付け位置を決めればOKでは無いんですね。
この治具を手でくるくると廻し、一番軽く回転する位置を探すのです。
勿論ギヤボックス内はオイルを注入済みです。
オイルを入れないで調整しますと油膜の厚み分が狂うのです。

その様な訳ですので、オイル交換用のボルト以外に触るのは厳禁です。
この治具が無ければ絶対に再調整は不可能です。

今の所、弄った方は居ませんので安心しています(笑)。

つまり、強くぶつけたり落としたりしますと微妙に狂う恐れが有ります。その場合は送り返して下さい。再調整をして届けさせていただきます。

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ギヤボックス本体が組み上がりました。
滅茶苦茶丁寧に組んでいるので時間は掛かります(完全に自己満足)。
で、試運転に入りたいんだけどやっちまった・・・・・・。



ストックは有ると思っていたモーターとのカップリング。有るには有るのだけれど・・・・・・。
シャフト径(穴径)が違う。慌てて何時もの商社へ発注。17日に届くのですが作業はストップ(汗)。

で、ちょいと解説。本体上面にある二つのボルト。ボタンキャップはフィラーボルト。つまりオイルの注入口。もう一つの六角ボルト。
拡大しますね。


横に小さな穴が開いています。この穴、ボルトの中心に開けた穴と繋がっています。
つまりブリザーボルトです。

以前此処へ取材に来た雑誌屋さん。僕は絶対に言っていないんだけど雑誌の記事中で完全密閉って書いて有った。
この構造で完全密閉ってかなりヤバいのです。
内部のオイルや空気は温度で膨張したり収縮したり。
判りますよね。もしも膨張したらオイルシールを押し出します。
必ず内部の空気を外部とつなぐ穴が必要です。と言って大きな穴だとオイルを吹いてしまう。
そんな訳で、ボルトの中心に穴を開け、六角の頭の横面にその穴と繋がる小さな穴(1mm有りません)を開けて有るのです。

内部容量から言ってこの程度の穴で十分なのですね。
今日は此のブリザーボルトを作った所で中断です。


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只今の作業机の上。


ギヤボックスの組み立てに入っています。
左側はギヤボックスの本体(この中にウォームギヤが組み込まれます)。
右側がモーターブラケット。
作り出した当初はモーターブラケットにモーターメーカー純正品を使っていました。
此れが問題で、機械精度が良くなかったのですね。
まあ普通に使うには良いんでしょうけど、兎に角低振動を求めるレコードプレーヤーに使うには無理が有りました。

その後知り合いの精密機械加工屋さんに特注して、良い物は出来たのですがモーターの振動を伝えてしまうのです。

昔(50年位前)でしたらこんな苦労は無かったのですが・・・・・・。
当時のレコードプレーヤーは廉価機器にはインダクションモーター。高額機器にはシンクロナスモーターが使われていました。
つまり、レコードプレーヤーの要求を満たす事の出来るモーター(低振動)が作られていたのです。

世の中DD一色に成り、サーボモーターの全盛。低振動のシンクロナスモーターが必要なく成ってしまったのですね。結果生産は終了。

所がへそ曲がりのピンキー君はサーボモーターとシンクロナスモーターの音の違いに気づいてしまった。

そんな訳で、シンクロナスモーターに拘っているのですが問題は振動対策。
モーターの振動をターンテーブルに伝えない。しかし正確なモーターの回転はシッカリと伝える。
この矛盾した条件を納得させるのに苦労をしたのです。

で・・・・・・・・。

モーターブラケットの取り付け穴に嵌っている樹脂パーツ。



この辺に詳しい方でしたら色でハハ~~~ン。
MCナイロンです。ナイロンと言いましても凄く硬く、旋盤で切断した物を取り損ねて下に落とすとカラ~~~ンと言う音がします。

ナントこいつが上の条件を満たしてくれるのですよ。
つまらん実験で偶然に発見しました。
樹脂って、微細な変形には豆腐みたいなのですが、それ以上の変形には無茶苦茶な強度を持っています。
この辺が上手く行ったみたいですね。


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