平成19年4月18日開店。店主の日々の日記です。
数日前から掛かりっきりのプリアンプの整備(改造)。
真空管(ECC82)の動作点が、当時のアンプと現在のアンプではかなり違っているのです。

単純に今の定数に変更するだけでは駄目でして、電源トランスから出て来る電圧がかなり高いのです。整流直後に大きな抵抗値を入れてドンと下げるのが一番簡単なんですが、そうするとその抵抗器の発熱量は半端では無くて・・・・・・。

整流直後でも落としますが、デカップリングでも落として発熱量を分散させたいのですね。
電流値は決まっていますので、それを元に各抵抗値を電卓で計算します。

実際に組むと、その計算値よりズレるのがごく普通です。
で、実測して微調整をするのですが・・・・・・。

エーーーーー、計算値で一発合格(ニコニコニコ)。この辺は経験がモノを言う部分なんですね。
経験から若干のさじ加減をするのです。
でも、8本もの真空管全てを一発で合わせるって・・・・・。

で、今回は一発で・・。

さて、此れからデカップリングコンデンサーを例のケミコンに交換。
初段管は本当に低い電圧で働かせていますので耐圧の低いケミコンで行きたいのですが出来ません。
450V耐圧を全ての真空管に使います。
なんで・・・・・?

動作中は耐圧の低いケミコンでもOKなんですが、電源SWを入れた直後。
整流管は直熱管。2~3秒で立ち上がります。対してECC82が立ち上がるには20~30秒掛かります。
つまり電源部は立ち上がっているのに、増幅部は電流を流しません。電流が流れなければ、電圧調整に入れた抵抗器での電圧降下が発生しないのです。
すると、デカップリングのケミコンに動作時よりもはるかに高い電圧が掛かってしまうのです。

それを防ぐ為に、僕のアンプには10数年前からタイマーを付けました。
まず増幅部の真空管ヒーターに電流を流しヒートアップ。
十分にヒートアップしてから整流管のフィラメントを熱します。

こうすると、ケミコンを動作状態の耐圧で済ませる事が出来るのです。コスト面もそうですが、小さくて済むので、部品配置に自由度が増えるのです。

今回の整備。新しく組むよりも手が掛かっています(笑)。



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頭がクラクラして来たので小休止。
只今の作業は、真空管の動作点を最新のものへの変更。

口で言うのは簡単ですけど、当時の電源トランスと現在の電源トランス。
B巻き線の電圧がかなり違うのです。

動作点が変わったのでB電圧も変更に成りました。抵抗値だけでのコントロールはしたくないので、今の動作点に合わせた電圧の取れる電源トランスへ換えたのです。

この様な事からも、市販の電源トランスでは結構我慢の設計をするようなんですね。
その様な訳で、僕のアンプの電源トランスは全て特注品です。

で、面白い写真。


デカップリング回路の抵抗器。左右に4本ずつ並んでいます。
左右別々のデカップリング回路です。此れを左右共通で作ってしまうとチャンネルセパレーションが稼げません。

その様な訳で、左右に同じ抵抗値が並んでいるのです。

片chだけの変更の終わった写真。


カラーコードの読める方でしたら、数値がかなり変わっているのがお分かりかと・・。
カソードのバイアス抵抗値も全て変わりました。
プレート負荷抵抗値は変わりませんがA&Bは全て撤去。

こういう作業って、やった方なら判ると思いますが、作るのよりも大変。
抵抗値も電卓を叩いた数値ですので、実測しないと狙った動作点の保証は無いんですね。

兎に角根気のいる作業です。で、頭クラクラ・・・・。

酔った勢いで・・・。
Aさんから預かったプリアンプ。最初の定数は・・・。
フォノイコライザーのバイアス抵抗値は180Ω。
勿論変更しましたよ。
で、変更後のフラット部のバイアス抵抗値は100Ω。
この意味が判ったらアンプの設計が出来ます。

真空管の動作点の肝はバイアス電圧です。

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本来はMCトランスの交換だけだったのに・・・。
中身を見ちゃうと、序に此処も・・。其処を弄るなら此処も・・・・。

キリが無いのです。20数年前と今でのノウハウの蓄積量は・・・。
イヤ、本当に自分でも驚いています。

僕の所から出たアンプのオーナーの方。真面目に僕のブログをチェック。
新しいネタを見つけると、自分のも同じにして。と持ち込まれる方多数(笑)。

その様な訳で、20数年前の侭と言うアンプは非常に珍しいのです。
今回のアンプのオーナー。ネットをまず見ていません(社長さんが見ていたら、仕事の方が・・汗)。
そんな訳で、僕が声を掛けた時だけと言う・・。
でね、声を掛けるのは良いんだけど、売込みって思われたくないんですよ。
僕の基本スタンス。お客様から声が掛かる迄アプローチはしない。

改造(チューンも)は、その方に喜ばれて尚且つ余計な出費はさせない。
そんな訳で、今回のチューン(健康診断も込み)もかなり安価な話をして来ました。

でもねー・・・・・。中身を見ちゃうとあれもしたい、此れもしたい・・・・。

エーーー、今現在の外した部品。



まだ半分も行ってません。
この調子では、話した予算では部品代だけだなー・・・(汗)。
要は火が点いちゃった僕が悪い。
きっとカップリングコンデンサーやCRイコライザー素子も交換しちゃうんだろーなー・・・・・。


写真のスプラグ製のケミコン。当時としたら良品でしたが、今のレベルではノイズが多い、高域特性が悪い(結果音がぼける)etc,etc・・・・。
例のケミコンへ交換です。
A&Bの抵抗器も音の粒子が粗いので、勿論交換。
ウーーーーン、何と言うか・・・。

部品は日進月歩で進んでいます。昔のパーツは・・。と言うのは単なる都市伝説です。
A&Bの抵抗器、10数年前にまとめて安価で売っちゃいました(笑)。勿論後悔なんてしていません。清々したと言う感じです。

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各部の動作点を最新のアンプと比較。

で、昔やった事を思い出した。
つまりですね、カートリッジの出力を真剣に計測したのです。
レコードを色々と掛けて(特に録音レベルの大きなレコード)、ピーク時の波高値を測定したのです。勿論高価な測定器ですので、僕の財力での購入は不可。

幸いな事に知り合いが1週間の約束で貸してくれました(感謝)。
ピークホールド機能が付いているので、付きっ切りでの測定は不要。
適当にレコードを掛けていて、数時間おきにチェックすればOKだったのです。
数日間、測定を続けました。
出た答えは以外にも・・・・・・。

此処で真空管の動作を考えましょう。一部ではフォノ入力の最大値を大きく取って自慢しているアンプも見かけます。
で、能動素子が扱えるダイナミックレンジは決まっています。
つまり対入力を大きく取ったアンプは微小信号に反応出来ません。

結論から言いますと、必要のない大きな信号を扱える動作点を選んだら、微小信号は増幅できないのですね。
つまり、鈍いアンプに成ります。

解決策はただ一つ。最大入力に対して若干の余裕(2倍も取れれば十分)を持たす動作点。
実は、マッキントッシュのフォノ耐入力が異常に小さくて驚いたのですが(メーカーは発表していません。僕の実測です)今考えると巧妙な数値かと・・。

フォノに入る最大信号レベルが判ったので、耐入力値も自然と判ります(初段管)、初段管の増幅率も判っているので、2段目以降の動作点もおのずと・・・。

そんな設計をしたら、有名先生はやっちゃいけない動作点に成ってしまったんですね(笑)。

つまり、カートリッジの出力が判ったので、真空管の動作点の考え方が変わったのです。
で、今回のアンプの中をしみじみと見ていたら、頭の中がウズウズウズ・・。
もうやっちゃえ。手間は掛かるけど使う部品は抵抗のみ。
僕の手間賃・・・・・・・。
行っちゃいましょう(笑)。



自分で昔作った物。今のノウハウではチョイ拙いな。
我慢できないんですよね。

更に更にの追記。
現在の初段管の動作点。以前作っていましたヘッドアンプと同じ動作点です。
更に、フォノイコライザーの2,3段目の動作点よりもフラット段の耐入力が少ないのって信じられますか?
フラット段はVRを含めて考えると増幅率がマイナスです(フルボリュームって考えられませんよね)。
通常のパワーアンプは入力電圧が1Vでフルパワーと設計されています(約束を守らないメーカー多々)。1Vでフルパワーが出ると、プリアンプのフラット段は減圧アンプに成るしかないのですね(笑)。

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只今、全ての真空管の動作状態を測定。
驚きました。略設計時の動作点を維持。

丈夫なアンプだなー・・(笑)。

で、困ったのは・・・・・・・。
回路は現行品(最新型)と同じなのですが、真空管の動作点が違うのです。
20年近く前だと思うのですが、世の常識を無視した動作点を採用しました。雑誌では超有名なアンプ設計者(プロかは不明)も、絶対に使ってはいけない動作点。と言っていたのです。

でも、僕としては僕の考えの方が正しいのでは・・・・?
そんな時には実験に限ります。動作点だけですので、失敗したら戻せば良い。

兎に角頭で考えてもダメです。下手な考え休むに似たり。って言うじゃないですか。
僕は疑問に思ったら実験実験。
確かに有名先生の言う事も判ります。此の動作点では真空管が暴走するかも知れないのですね。
想像ですが、暴走を恐れて先生は実験をしなかった。
おバカさんのピンキー君は、実際に暴走の現場を確認しないと、理解出来ない。

結論です。その時以来の僕のアンプ。僕の動作点を採用しました。もう20年近く採用していますが暴走事故はゼロ。
と言うか、信じられない測定値が出まして真空管って・・・・?(車のエンジン設計で80馬力の出力で設計したのに120馬力も出てその他も問題ない、と同じような事に成ったのです)

今では、僕にとって標準動作点に成りました。

で、今回のアンプ。動作点も変えたいなー・・・。

この時の実験内容を友人に話しました。友人も驚いて『ピンキーさんが言うから信用するけど、他の人が言ったら、そんな馬鹿な。コイツ狂ってる。って思うよ。』(笑)。

その様な訳で、回路図は公表していますが、定数は公表していないのです。
イエ、秘密と言うのではなく、公表したら軽蔑されるんじゃないかと・・(汗)。

僕の悪い癖。世の中の常識を覆すのが大好きでして・・・・・・・・。

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昨日、引き取って来ましたプリアンプ。
20数年前に作って、一度も僕の所へ戻ってこないと言う、非常に珍しい(笑)アンプです。
壊れた訳では無いですが、内臓のMCトランスを交換する(更に良い音へ)のが目的ですが、序ですので健康診断と軽いチューンを施します。

20数年前ですと、今のノウハウを全て入れるととんでもない費用が掛かりますので、ローコストで効果の大きな所をチューンします。



昨夜一晩玄関に置いたので、ムチャ冷たく成っていました。
部屋に入れたら軽い結露(汗)。

当時使っていた底板固定ボルト。


20数年ぶりに外されましたので、軽い腐食が見られます。
全数、現在使っているステンキャップへ交換。

で、謎なのがこの部分。


フロントパネルが10mm厚(標準は5mm厚)。オーナーの希望で作ったのだと思います。
問題は、一般のパーツは10mm厚のパネルは想定していない。
結果は・・・・・・。





裏座ぐりをして取り付けると言う・・・・・(メンドイ作業をよくもまあ・・)。

内部写真。


20数年間使ったとは思えない状態。底板に空気穴を開けていませんので、内部で空気の対流が起きません。結果内部が汚れない。
厚いアルミシャシだからこそ出来る方法です。

このシャシにして最初期のモデルでは無い事が判るのは、ブロックケミコンを一切使っていません。全てチューブラコン。
ブロックケミコンって配線が凄く楽なんですけど、音質的には褒められないんですね。

取り敢えず此れから、各真空管の動作をチェックします。製作当時の動作点を維持していたらメチャ凄い。

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数ヶ月掛かりっ切のプレーヤー。無事に納品が済みました。
此処で気分晴らしにまたもやの車中泊での旅へ・・・・・。

世の中そんなに甘くありません。Aさん宅へ本日訪問。
つい余計な事を言った僕の所為。
『内臓のMCトランス、当時としては最高の物を付けました。でも・・・・・。』

Aさんは即交換して。

有難いですよね、トランスの音質の聴き比べをしないで、僕の言葉を信じてくれた。
入荷に時間の掛かるMCトランスですので、2ヶ月半掛かりました。
入荷時はプレーヤーの最終状態。

今掛かっている仕事が済んだら直ぐに掛かります。の我が儘をAさんは承知。
そんな訳ですから、Aさんの時間が取れた今日、プリアンプごと引き上げて来たのです。
と言うのは、このプリアンプ。作ってから20年以上経って居る。その間チェックは全然していない。
そんな訳で、今回はMCトランスの交換を言い訳にして完全な健康診断です。
Aさんも其れに掛かる出費は了解済み。

20数年前に嫁に出た娘との再会です。
最高の状態にして嫁ぎ先に戻すからね・・。


此処迄僕を信用してくれているAさん。掛かった費用を全て請求するのは・・・・・(汗)。
何時もの僕の感覚。食べていければいいじゃない・・・・。

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プレーヤーの製作と同時に受けましたプリアンプの改造。
フォノ入力をレモにしてね。

プレーヤーの出力がレモですので当然です。

で、つい余計な事を言ってしまうピンキー君。仕事が増える・・・・・。

エーーー、ヤットシールドケースの取り付けです。
基本的にシールドケースは電気的にシャシと繋がらないと効果が落ちます。

そんな訳で・・・。


真空管ソケット取り付けビスの片側を外し、卵ラグを取り付け。
そのラグとシールドケースを短い配線で繋ぎます。

短くし過ぎると、真空管の交換にいちいち配線を外す様に成るので、その辺は適時に・・。



今回は8本全てに被せましたが、効果の大きな真空管はフォノ初段とフラット部です。
実はフラット部って、通常の音量ですとフォノの2,3段目よりも扱う信号が小さいのです。
VRを込みで考えると、フラットアンプは減圧アンプと考えてOKです(大音量の時には増幅しますが、一般家庭での使い方ですと、増幅量よりもVRで絞る量の方が大きいのです)。

さ、明日はプレーヤーの仕上げですね(暫く休んでない、涙)。

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