平成19年4月18日開店。店主の日々の日記です。
トランスとコンデンサーの位相特性を測定しましたので、その応用編です。

でも、今迄の測定で、確かにコンデンサーとトランスは位相がずれる。でも無視して良い範囲、と僕は感じました。と言うのも最終信号を発生するのはスピーカー。
こいつの位相特性なんて・・・・・(大汗)。
フルレンジは分割振動の塊ですし、マルチウェイはクロス部分でどう成っているのか・・・・・?



位相特性

今回のターゲット。僕のシステムのウーハーを鳴らしているパワーアンプです。
写真でお解かりの様に、EL34一段の超シンプルアンプ。

で、おさらい。真空管の位相特性は標準の使い方でしたら、180度入力と出力は違います。つまり逆相。
この様な単管アンプは逆相出力に成るのですね。

このアンプの構成は入力に1:4のトランスが入っています。
続いてEL34の三結。最後がOPTと言うシンプルな物。
真空管の位相特性はDCから可聴帯域をはるかに越える領域まで狂いません。
今回の位相のズレは、入力と出力に入っている二つのトランスが原因です。


位相特性

最初はお約束の1kHz。
上下の波形が逆さまですが、180度狂っているのですから当然ですし、この方が位相のズレが見易いですね。
1kHzでのズレは見えません。


位相特性

続いて100Hz。流石に若干のズレが見えます。
でも、トランスを2回通ってこの状態ですので優秀です。


位相特性

さあ、トランスに取ってはとても苦しい10Hz。
あ、書き忘れましたが、上が入力、下が出力です。
狂っていますが十分に優秀。この帯域で位相の狂いの無いスピーカーなんて・・・(笑)。
特にfoの小さなスピーカーは・・。

トランスを2個使っても、この程度の位相ズレで済むのです。
正直、こんな測定をしても殆ど役に立ちません。測定器の奴隷に成った方には・・・・。

考えて見ましょうよ。オーディオ装置って音楽を聴く機械。
入力ソースが位相まで考えて録音していると思いますか?(笑)。


位相特性

最後は掟破りの20kHz。普通のトランスなら音を上げます。
1kHzの画像と比べてみて下さい。この周波数でも出力は下がっていません。

位相は若干ずれています。で、ずれる方向が低域とは逆。

高域のレンジが広いトランスは、高域の位相特性も良好です。
でも、そのトランスが、音の良い保障は全然有りません。

拍手[0回]


昨日修理をしたEL34PPパワーアンプ。イコライザーが入っている。と言う訳の判らない症状を見せました。
長年の経験でも初めて。

こんな時にマイッタナーと思うか面白いと思うか・・・。
勿論僕は後者。

で、昨日のブログをアップしながら原因を考えていました。
略此処だな。と思って、もう一度電源オン。
アノネー・・・・。まあ古いアンプには良くある事なのですが、症状が再現されない。
長時間粘ったり、電源のオン、オフを繰り返したり・・・・。

出ないんですよねー。

と言う事で、見込み修理をしました。きっと此処だよねー。違わないでねー、って(笑)。

その辺の詳しい所はHPにアップしました。単に修理だけではなくムラード型位相反転回路の、解説もしたかったのです。

下のURLで見られます。興味のある方は・・・。


http://hayashilab.syuriken.jp/aucircuit01.htm

拍手[0回]


二~三日前に、懐かしいお客様から電話。
パワーアンプの電源が入らないと言う。20数年前に作ったアンプ。単純な修理だろうけど、使用時間が長い。
『送って下さい。全てチェックして送り返します。』

そのアンプが、今日の午前中に到着。ギヤボックスに掛かりたいんだけど、アンプ修理の方が、はるかに短い時間で終わる。
店の中の物は、出来るだけ少なくしたいし・・・。

と言う事で、さっさと修理をして送り返す事に。


修理

送られて来たアンプは此れ。SラボラトリーのKITアンプ。
この店を開けて、すぐに購入。要するに人様のアンプを見て勉強したい。当時の僕の実力は・・・・・(汗)。

組み立てて見ると、片chが発信。原因不明。こちらもプロの端くれだから、製造元には絶対に聞かない。そう、腕を上げたかったら人には絶対に聞かないで、とことん頑張るのが一番。

原因をつかむ為に、オシロと発信機を購入。テスターで判る範囲では無かった。

初めて弄るオシロスコープ。慣れると『ヘー、便利。』アンプを弄る人間には必需品と思い知った。
発信の原因は、カップリングコンデンサーの不良。最初から不良パーツが入っていた。

さて、正常状態で音を聞くと大した事が無い。此れならラックスキットを改造した僕のアンプの方が余程まし。

此処のアンプ。こんなモノか・・。

で、買っちまったのに、使わないのはもったいない。

ホンジャ、作り直してしまえ。
回路も、真空管も換えてムラード型の標準PPアンプへ。
元の回路はウェスタンタイプの位相反転回路。あれ変?上下対象にするのが大変。

極普通のEL34三結PPアンプです。此れが結構好評に。
そんな時、お得意様がこのアンプを欲しがった。
殆ど使っていなかったのを特価で提供。

その後、別なオーナーの所へ。そんな経緯のアンプです。


修理

フューズホルダー。内部の金具が折れています。

修理

此れが正常なフューズホルダー。金具が見えるでしょう。
まったく同じホルダーの手持ちが有りました。

さて、外そうとしたら・・・・。




どうやっても、取り付けナットと本体が供回り。外れない。
で・・・・。
写真で判りますよね。ネジのゆるみ止めに接着剤を流して有ったのです。
僕の仕事じゃないですよ。
このキット。シャシに部品は取り付け済み。配線をするだけのKITだったのです。
昔は信用していたこのメーカー。今は・・・・・・(笑)

で、仕方なく破壊取り外し。やわい樹脂製ですのでプライヤーでボキッ。

交換が終わり、通電チェック。DC的には正常動作。
で、信号チェック。
発信機で信号を入れ、出力の波形を見るのです。

オウ、綺麗なサインウェーブが出ているわい。

此処で周波数をスィープ。ナヌ・・・・・・・。
オイ、このアンプ、フォノイコライザーが入っているのかい?

高域ほど減衰。この感じ6dB/oct。念の為に方形波を入れたら、イコライザーを通した時と同じ崩れ方の波形が出て来る。

さて、こんな動作。どこかのコンデンサーが悪戯をしているな。

面白くなって来ました。

拍手[2回]


今回依頼の仕事。ネットワーク式からチャンデバ方式への変更。

一般市販のチャンデバなら、プリとパワーの間に挟み、ネットワークを取り外しておしまい。
至って簡単な作業です。

今回の場合。今まで使っていたドライブアンプ(詳しくはこちらへ、http://hayashilab.syuriken.jp/audoraibu01.htm  )
を、チャンデバに改造。
それに伴い、全てのパワーアンプに入力トランスの取り付け。同じく入力VRの取り付けです。


メクラ蓋

このパワーアンプ、最初はドライブアンプを使う事は考慮しない普通のパワーアンプでした。
それをドライブアンプ仕様に改造しましたので、初段管のソケットが残っていたのですね。

此処の穴をVR取り付けに利用する事に・・・。


メクラ蓋

内部の様子。旋盤で挽いたアダプターにVRを取り付け、入力レモとVRの間にトランスを配します。

VRの右側のトランスはドライブアンプ用ですので、使いません。出ているリード線は全てシャシアースをして、悪さをしない様に配慮。

残る作業は、OPTの出力インピーダンスの調整。

此れと同じアンプを、同じに改造が終われば、チャンデバのLC配線に入れます。

拍手[0回]


入力VR

僕は以前、パワーアンプの入力VRが大っ嫌いだったんですね。

今はご存知の様に使っています。

嫌いになった理由は・・・・・・・・。

写真右のVR、LUX純正品。左、僕の愛用品。
写真で判りますよね。純正品のなんと粗末な物か・・・・・。

昔々。僕は量販店で働いていました。市販のアンプの殆どを扱っていました。国産ローコスト機から輸入の超高額品(高額品、高級品とは違います、汗)まで・・・。

で、悪戯好きのピンキー君。アンプの蓋を開けて中を弄るのなんて朝飯前。よくお客様のアンプの改造を頼まれました。

そんな経験が、変な迷信にとらわれない、今の僕の土壌に成ったのです。

当時のパワーアンプ。入力VRが付いているのが標準。でも実際には全開で使っていますよね。
だったら必要ないや。外しちゃえ。

外すと・・・・・・。ウソッ。
音の鮮度が違うのです。
そりゃ1台だけの経験でしたら、此処にはアップしません。偶々そのアンプだけの事かも知れないですから・・。

かなりの台数をしました。
音の変わらなかったアンプ。記憶に有りません。
良く成ったアンプ。弄った台数全て。

こんな経験をしちゃえば、自分で作るアンプに、入力VRなんて絶対につけられません。

30年以上、入力VRの無いアンプを作って来ました。

それが使い出した理由は、前にも書きましたがマルチアンプにした所為。ネットワークのアッテネーターとの鳴き比べで、入力VRに軍配が上がったからなんですね。

でも、この結果はあくまでも僕の装置。まあ僕のお客様なら装置が判っていますので、僕と同じ結果が出ます。

でも、それ以外での機器では判りません。

特に入力VRから初段管まで、長々とシールド線を使っているアンプは要注意です。

拍手[0回]


懐かしいアンプ

非常に懐かしいアンプが帰ってきました。
と言って、僕のものに成った訳ではなく、10年以上惰眠を貪っていたアンプの復活作戦です。
製作してから25年以上経っています。

でも・・・・・・。

基本的に何も弄りません。この程度ではおかしくならない様な作り方をしています。

今回、このアンプのオーナーの方、チャンデバを使ってマルチアンプへ発展させるのに、アンプが必要になり、休んでいたアンプを引きずり出したのです。まあ引きずり出させたのは僕なんですが・・・。



懐かしいアンプ

健康診断をするのですが、単純なアンプですから、梃子摺りません。

予防措置で、ケミコンは交換に成るかも知れません。
マルチアンプには必要な、入力VRの取り付けと、ゲイン調整が一番の改造点です。

今日中には仕上がる予定です。

拍手[0回]


僕の昔のパワーアンプ。入力VRはつけませんでした。
基本的に全開で使いますので、必要を見出せなかったのです。

ネットワーク方式と言いながらも、各ユニットを専用アンプで鳴らす方式にどんどんと進化(廃退かも)。

7kHz以上を受け持つユニットも専用アンプで鳴らす様になると・・・・・。

ネットワーク素子の中で、一番音質劣化を起こしているパーツ。僕はアッテネーターと思っています。

其処で実験。

各パワーアンプに入力VRを取り付け、アッテネーターで絞った場合と、VRで絞った場合での音質の聞き比べ。


入力VR



予想通りですけど、パワーアンプの前で絞った方が音質的に好ましい。
実際に測定してみると判りますが、アッテネーター、絞る位置でインピーダンスの変動を起こしています。

此れはネットワークにとっても、苦しい状態。

この実験以来、僕のネットワークからはアッテネーターが消えたのです。

で、入力VR。微妙な調整が必要。各ユニットのバランスを取る、非常に重要な役目を持っているのです。

普通のAカーブのVRですと、チョットつまみを回すだけで、変わり過ぎ。

其処で・・・・・。



入力VR

パワーアンプの入力VR。音量調整用では有りません。つまり絞りきる事は有り得ないのですね。

微調整がし易い様に、VRに下駄を履かせました。
ユニット間の能率差が大きい場合は、上に履かせる場合も・・。

僕のシステムの場合、能率差が大きく有りませんので、最大絞っても-6dBにしました。

先日の、ハムバランサーの使い方と同じ発想です。
今朝もVRを微調整。
チャンデバのLC素子を弄った為に、未だ落ち着いていません。
微調整と言っても平気で15度位回します。
その位回しても1dB狂うかどうか?

尤も、バランスが取れて来て、最後の仕上げは、ほんのチョイに成るのですが・・。

拍手[0回]


バイアスについて、理解出来ましたでしょうか?

要は、真空管を暴走させないブレーキです。
自己バイアスと固定バイアスの二通りの方式が・・。

まず真空管。ずっと長期にわたって動作点は動かない物なのでしょうか?

ずっと以前、書きましたよね。ペアチューブなんて意味が無いって。
つまり、動作を続けますと真空管の動作点は変わってきます。電流値が増える物、減る物。様々です。

で、固定バイアス。
バイアス値は常に一定ですから、真空管のずれが其の侭電流値に表れます。

固定バイアスで組んだアンプ。2~3年後に真空管の電流値を測定すると・・・・・。結構あせると思います。

自己バイアス。
真空管の内部抵抗値が減り、電流の流れ易い球に成ったとしますね。
電流が増えるとオームの法則(真空管アンプの計算式は、殆どオームの法則で判ります)で、バイアス抵抗に掛かる電圧も上がるんですね。つまりバイアスが深くなるんです。

バイアスが深くなると、真空管の電流値は減ります。つまりDC的にサーボを掛けたのと同じに成るんですね。

真空管のずれに対して、逆動作をするのです。結果ペアチューブでなくてもプッシュプルに使えますし、長期の使用による真空管のずれを気にしないで良く成ってしまうんです。

非常に都合の良い回路なんですね。

更に・・・・・・。
固定バイアスの電源が壊れたとします。
こう成ると、真空管のバイアスはゼロに成ってしまうので、真空管は暴走を始めます。

固定バイアスの調整に半固定抵抗が良く使われますが、あれが接触不良(起き易い事故)を起こしたら、バイアスはゼロです。

マッキンはそれを嫌って、調整を出来なくしたのでしょうね。
でも、調整が出来ないと、正しいプッシュプルには成らない。と言うジレンマに落ちます。

自己バイアスの場合、バイアス抵抗が断線したら・・・・。
ハイ、真空管に電流が流れなくなるだけで、事故につながりません。
パスコンのショートの場合は暴走しますが、コンデンサーのショートはめったに有りません。ショートよりも、容量抜けかパンク事故が殆どです。

機械の設計に、壊れた時、どの状態にするか?と言う重要な部分が有るのです。

上手い設計者は、壊れたら止まる設計を。解っていない設計者は、壊れる事を考えないので、壊れると暴走するのに気が行かないのです。

昔、車にオートクルーズコントロールと言うのが付きました。高速道路等でクルージングに便利な装置で、100km/hと指定すると、車は100km/hで走り続けます。上り坂も下り坂も同じ速度を維持。
運転者がアクセルを踏むと加速をし、踏むのをやめると100km/hに戻り、ブレーキを踏むと減速。ブレーキを離すと100km/hに戻ると言うものです。

一時高級車には、皆付いていました。
此れが故障したのですね(結構続発)。
壊れた時に、速度が落ちるのなら良いのですが、壊れると加速を始めてしまうのです。制限無くどんどん加速。

この設計者(ボッシュ製と聞いています)、僕に言わせると素人。壊れたら、兎に角止まる方向にしないと・・・・。

アンプも同じです。壊れたら其の侭静かに。まかり間違っても、スピーカーに異常電流を流すなんてもってのほか。

でも、壊れるとスピーカーに心中を持ちかけるアンプのなんと多い事か・・・・。

バイアス回路。僕が、どちらを使っているか解りましたよね。

で、自己バイアスはパスコンの音がする。と書きましたが、固定バイアスもバイアス電源のコンデンサーの音がします。
しかも、グリッドに加えるので・・・・・・。

拍手[8回]