今考えて見ると、散々スピーカーは遊んで来ました。
国産完成品から入り、一旦自作の道へ・・・・。
雑誌の自作記事でその気にさせられたんですね。

２０代前半の僕は、自慢の自作スピーカーを持って、馴染みのオーディオ屋さんへ。まあ道場破りです（笑）。

見事に返り討ちに遭いました。戦った相手はタンノイの『ⅢLZ、モニターゴールド』

コテンパンに打ち砕かれました。
当時、モニターゴールドは旧モデル。HPDに変わっていたのです。
でも、その店には２セット在庫が有り、行けばいつでも聞かせてもらえる状態。

数日後、その店に行くと僕の目の前で１セットが売れてしまい・・・・・・。
残り１セット。当時の僕の収入では、２か月半分の給料。
しかも車を買ったばかりでクレジット残高は・・・・・・。
でも、我慢できなかったんですね。何とか成るさ。クレジットの契約書へ印を・・・・・。
此れが海外スピーカーを使った最初です。

その後、国産SPには目も向けず・・・・・。
アルテックが堕落したスピーカーを作り出し、仕方なく良い時代のアルテックを夢見てマクソニックへ・・。

その時代に、この店を開けました。

店を開けて２～３ヵ月後、関本（シーメンスの輸入代理店）の営業マンが僕の所へ売り込みに来ました。

当時の僕は、シーメンスの存在は知っていましたが、値段の割りに作りの悪いボッタクリスピーカーと・・・・・・・。

僕の店で、マクソニックとコアキシャルの鳴き比べ。
今考えると、あの時営業マンが持って来たエンクロージャーが悪かった。
バスレフエンクロージャー。あのエンクロージャー、僕に言わせりゃ欠陥品（当時は判らなかったですけど・・）。
平面バッフルで持って来れば一発だったのに・・。

マクソニックに中々勝てない。そりゃー僕が当時の技術（今考えたら恥ずかしい）で懸命にチューニングしたんだもの。

でも、営業マンしつこい。中々引き下がらない。

オペラのレコードを掛けた。
声が違う。ご存知の様に白人の声と日本人の声、基本的に違います。
白人独特のバタ臭い声。
これがシーメンスなら判る。
対してマクソニック。ドイツ語の達者な日本人の声。

作った人間の血筋が、こんな所に現れるんですね。
試聴はバスレフだったので、平面バッフルでの納品を頼みました。

数週間後に入荷。それ以来、僕とシーメンスの生活が始まったのです。
勿論マクソニックも同居。
お互いに、火花を散らす戦いをさせました。
僕としては、３８cmウーハーに２吋ドライバー、ツィーターも当時は数種類持っていた（ウーハーとドライバーは励磁型）。

その大型マシンが、コアキシャルに負ける筈が無い。負けたのは僕の所為。
３年間戦いました。

アンプ作りの腕も其れ成りに上って来て・・・・・。

当時の僕の腕で、最高のパワーアンプを作ろう。コストは気にしない・・・。
WE３１０を初段管、トランス結合で３００B。整流管にも２７４。
トランス類は全て特注。
シャシは真鍮板にニッケルメッキ。

トンでもないアンプを作ったのです。
完成。まずマクソニック。
変わらない、今迄のアンプと変わらない。そりゃしいて言えば、程度は変わっているけど、音楽の表現力に差が出ない。
１日中、レコードをとっかえひっかえ掛けたけど、結論は同じ。

ガッカリしてその日は家路に・・・・・・。

翌日、店内の横に片付けておいたシーメンスを引っ張り出す。
マクソニックへ行っていたスピーカーケーブルを、シーメンス（コアキシャル）へ・・・。

レコードに針を・・・・・。
今迄もマクソニックに勝っていたこいつ。その差を更に広げて・・・・・。
いいアンプだね、って言っている。

そう、マクソニックがたとえ悪くなっても、アンプの差に反応したら考えは変わりました。
そうか、このアンプはシーメンスには合うがお前には合わないんだね。

でも、反応しない、アンプの差を表現出来ない。

僕は、良く成っても悪くなっても反応さえすればマクソニックは手放しませんでした。
反応しない。
要は、アンプの差を出せないって事は、演奏の違いにも反応しないと言う事。
そう、オーディオ装置は、所詮音楽を聴く為の道具（このスタンスは絶対に変えたくない）。
演奏の違いに反応しない装置なんて僕には絶対に許せない。

数日後、マクソニックは友人の家へ・・・・・。
２５年前の事です。

で、その時のコアキシャル。
今は九州で余生を送っています。
使っているのかなー・・・・・（笑）。

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