只今掛かっているのがこの仕事。
フォノイコライザー素子の交換です。
僕のところのプリアンプは標準仕様が有り、其れに沢山のオプションを組む事によって、更なるグレードアップが出来る様に成っています。
そのオプションの一つがLCRイコライザーでした。
自作マニアの垂涎の的(笑)。
僕のところでLCRを採用したのは20年以上前。
確かに当時のCR素子ですとLCRイコライザーに軍配が上がりました。
でも、高価。
で、オプションに設定し、予算の少ない方は後からでも改造可能に成ったのです。
それから20年近い月日が経ち、素子のグレードもどんどん上がって来ています。
店頭のアンプのLCRを外し、新型のCR素子に交換してみました。
ハ・ハ・ハ。工業製品の進歩は素晴らしい。
完全にLCRの負け。
6dB/octのカーブですから、以前からLを使うのには疑問が・・・。
でも、聴感でLCRの方が良かったのですから仕方が有りません。
部品の進歩で従来の常識(迷信)が覆される事はしばしば起きてきます。
でも、従来に拘っていると進歩は有りません。
で、昨日まで言っていた事を、突然覆したりするもんだから、友人には嘘つきって言われています(汗)。
完成したEL34三結シングルアンプ。
回路的には何も特別な事はしていません。
これで十分なのです。
これ以上余計な事をする事をオイロダインは嫌がります。
不思議と、アンプをオイロダインを使ってつめて行きますと、そのアンプは他のスピーカーでも平気で鳴らすのですが、他のスピーカーでセッティングしたアンプをオイロダイン(コアキシャル)に繋ぐと馬脚を現します。
僕はよく親しい人に話します。
『僕のアンプを作る腕はシーメンスに鍛えられた。』
小手先でのテクニックで誤魔化そうとするアンプを嫌うのです。
以前、ヘッドアンプでどうしても残留ノイズを少なく出来ず、NFで逃げました。
確かにノイズは減りましたが、音楽のエッセンスも減りました。
再度、ノイズの削減の努力を要求してきたのです。
他のスピーカーならバレないんだけどなー・・・。って恨めしく思いながら。
昨日オイロダインを使っている友人が来店。
笑いながら『此処で鳴っている音を、オイロダインってこんな音なんだ。って思ったら大間違いだよね。』
そう、これは僕の音。オイロダインの音でも300Bの音でも有りません。僕が音楽を楽しむのに必要な音なのです。
僕は音作りを嫌います。でもどうしても残ってしまう僕の音。
自分の体臭の様なものと思っています。自分では判らない。でも他人には判る。
EL34を使っても300Bを使っても、結局は僕の音のアンプしか出来ません。
今回の製作記の中で一番書きたかったアースライン。
アースラインを書くと最初の方で言ってしまったので、気の早い方はすぐに僕のところへ来てしまったりして・・・・・(笑)
写真で説明すると、判り辛いかと思って回路図にしました。
赤丸で囲んで有るのが数日前のブログに載せたアースポイントです。
アースマークのところだけでシャシに繋いで有ります。
これを見てお判りでしょうが、シャシには電流を流しません。
また、各回路ごとに信号回路は完結して、他の回路との間での干渉を防いでいます。
間違っても各回路のアースへ行く線を1本ずつアースポイントへ運んではNGです。
各回路で完結させ、其々をアースポイントへ。
これが基本です。
で、デカップリング回路。これが信号回路か、電源かって悩みますが信号ラインです。と言うか負荷抵抗の電源側をAC的にゼロにする役目ですから信号ラインと考えます。
デカップリングを2段にして有りますがこれは非常に有効です。
ナゼかは考えてみてください。
僕のアンプはNFを一切掛けない事にも繋がっています。
最初に計算で出た抵抗値で組み、その後の調整と思っていたのですが、一発で狙いの電流値が出て、ノン調整で済んでしまいました。
初段管のプレート電圧は予定よりも高かったですが、電流値はピッタシカンカンと言う事で、其の侭にして有ります。
基本的に動作点はカソード電圧と電流値は気にしますが、プレート電圧はあまり気にしません(パワー管は気に成りますけどね)。
一応安心の為にサインウェーブで周波数特性を測ってみました。
30Hz~25kHzまで略フラット。
低域はもっと伸ばせるのですが(カップリングコンデンサーに小容量を使っています)、これ以上伸ばすと弊害の方が大きく成るので、止めています。
早速、貸し出しに出張です。4Ωで組んだのも、そのお客様の希望。
さてさてどうなりますか。(ワクワクドキドキ)
今回採用したアウトプットトランス。
何しろ端子(巻き線が其の侭出ている)が沢山有り、メーカーの説明書がないと接続不能。
でも、トランスを意識させない音が(逆に言うとトランスの個性が見当たらない)気に入っての採用です。
このトランス、一般に使われているタップ式ではなく、二次巻き線が沢山有り、その組み合わせで二次インピーダンスを決めています。
この状態が8Ω負荷に適した接続。と言うかスピーカーが8Ωだった場合、一次インピーダンスが3.3kΩに成る接続です。
この接続は4Ω負荷で一次のインピーダンスが3.3kΩに成ります。
つまりこのトランス。スピーカーのインピーダンスによって、巻き線の組み合わせを変える方法ですから、色々なスピーカーの試聴には兎に角不便。
でも、一般の方なら繋ぐスピーカーは決まっていますから、不便は感じない筈。
オーディオショップでの試聴室では嫌われる方法ですね。
でも、ナゼこんな面倒な方法をこのメーカーは採用しているのでしょう?
此処からは想像。
二次コイルをタップ式にした場合、16Ωのスピーカーを繋ぐ場合は問題ないのですが、8Ωや4Ωのスピーカーを繋いだ場合を考えて下さい。
16Ω迄の間のコイルが余ってしまいます。
僕の今までの経験ではこの遊んでいるコイルが悪さをする。
他メーカーのアンプで、この遊んでいるコイルに適正な処理をすると、音質アップが著しいのを何度も経験しています(インピーダンスの高い所程効果が認められます)。
トランスを使う時、遊びの巻き線を作らない。
僕が気にしているトランスの使い方です。
このメーカー。全てのトランスがこの方法です。タップ式は一切採用していません。
また、社長の考えはキャラクターの無いトランス。入れた事の判らないトランスが理想。と言っているそうです。
僕の考え方と見事に一致。装置を意識させない装置。
美音を謳っているパーツが嫌いなピンキー君なのです。
何もするなよ。演奏家の姿を其の侭出してよ。我侭なのです。
今回のアンプの出力管は6CA7(ヨーロッパ名EL34)。
この時代でも、入手の簡単なパワー管です。
珍しい○△□の名球(迷球)を採用。このチャンスを逃すと二度と手に入れるのは難しいでしょう。
なんて言った方が商売としては楽。
でも、後の修理はどうします?
珍しい真空管を使いたがるコレクター趣味は有りませんので、いたって手に入りやすいEL34の採用です。
この真空管、カソードと第三グリッドは別々の足で出ています。
三結の場合は其々を繋ぐのですが、その足が1番と8番の足。
隣通しの足です。
一般には隣通しですから、簡単にまっすぐに接続。
で、これが拙い。
真空管ソケットの金属端子部分(ブロング)。
皆グラグラ。(中には勘違いをしてシッカリとしてしまった高級ソケットも売っていますが)
ナゼこんなに皆グラグラなのでしょう?
答えは簡単。
真空管の足。そんなに高精度の位置で立ってると思います?
かなりいい加減。特にMT管などは見て判るとおりです。
で、その足に馴染ませる為に、わざとグラグラに成っているのです。
ですから、隣通しのブロングをキッチリ繋いでしまうと、接触不良の原因に・・。
其れを防ぐ為には、足への配線は軟らかい配線をゆったりと這わすのが原則。
今回はエナメル線で剛性が高いですから、U字にまげて動く様にしたのです。
詳しくは http://hayashilab.syuriken.jp/au300b31.htm で。
良いアンプを作りたいのでしたら、徹底的に共通インピーダンスの削除です。
この例はめったにやらないでしょうが、トランスとスピーカー端子の距離が遠いと、やってしまう方がいます。
昨日と同じく赤の線の部分が共通インピーダンス。
結構やってしまいそうなのが、マイナス端子同士を繋いで1本の線でアースポイントへ。
これもNG。其々のマイナス端子から其々線を出しアースポイントへが正しい配線です。
この時、アースポイントは一緒でも別々でも構いません。
写真では解り辛いと思いまして回路図でのアップです。
アースラインの共通インピーダンスばかり言ってきましたが、B回路にも起きてしまう事がしばしば。
上の図で赤い配線が共通インピーダンスです。
配線の基本。一本の配線には一種類の電流しか流さない。
上の図ですと、赤い部分には左右チャンネルの信号が流れてしまいます。
此処の配線のインピーダンスがゼロなら問題有りません。
でも、そんな事は絶対に不可能。
メーカー製でも平気で上の配線をしているのを多々見かけます。
下の配線をすると、間違いなくコストアップ。
沢山の台数を作ると成ると1円でも無駄に出来ません。
でも、自作のアンプは一台限り。この辺のコストアップよりも配線の面倒の方が気に成ります。
配線が面倒と言う方は、アンプを作ろう等とは考えないでしょうから、メーカーでは出来ない贅沢を思いっきり楽しみましょう。
ちなみにこの配線の違いはチャンネルセパレーションに効いて来ます。
アース母線を張り、左右のパーツを一本の母線に落とすなんて、セパレーションに全然気遣っていない配線です。
市販品に有りますよね(笑)。