平成19年4月18日開店。店主の日々の日記です。
LX38

ある程度の掃除が出来たら、まずパワー管のアイドリング電流値の測定です。
万が一、オーバー電流が流れていますと、測定中にパワー管やその他のパーツを痛めてしまいます。
測定は敏速さが要求されます。
ぐずぐずしていたらパワー管のプレートが赤熱。でも成ったら、入手が難しいパワー管を駄目にしてしまう恐れも有るのです。

赤丸で囲んである10Ωの抵抗。
アイドリング電流を測る為に取り付けて有ります。
カソードとアースの間に入っていますので、電流値が50mAなら、0.5Vが抵抗の両端に現れます。

じゃあ、この抵抗の両端にテスター棒を当て、電圧を測れば良いんだな。って直ぐに始めてしまいます?

チョット拙い。古いアンプです。10Ωの抵抗値を信用しますか?
僕は疑って掛かります。
実際に抵抗値が狂っていて測定が出来なくなったアンプを見ていますので、信用出来ません。

各パワー管に一本ずつ付いていますので、測定です。
今回は4本ともOK。若干は違っていますが誤差範囲。


LX38

テスターで測定するわけですが、マイナス側のリード線はアース端子にシッカリと固定。こうすればプラスリードだけに神経を集中できます。

10Ωの真空管側の電圧を測ります。0.5Vを超えて暴走する様子がわずかでも見られたら直ぐに電源OFF。

4本のパワー管を見るのですから、兎に角素早く。


LX38

アイドリング電流を調整するトリマー。
青い半固定抵抗です。
左右chで同じですので片側だけを記載します。
VR204はプッシュブルの両真空管の電流値を決め、そのバランスはVR203で調整します。
つまり204で二本の真空管の全体を決め、203で同じ電流にします。
シーソーの関係と言えばお解かりでしょうか?

これを左右chで行うのですが、片chを合わせると、反対側のchも狂いますので、何度も合わせる必要が有ります。

また、アンプの温度が上がってきますと、若干の狂いが出ますので、再調整が必要です。

合わせる電圧は0.5Vが本来ですが、そうするとパワー管の寿命に問題が出易いです。
貴重な50CA10ですので、0.35Vに合わせて下さい。
発熱量も減り、パワー管の寿命も延び、音質への影響は有りません。
メーカーでも生産終了後にオーバーホールに出すと、この値で帰ってきます。


LX38

此処まで済めばしめたもの。突然暴走と言う事態は殆ど心配しなくて大丈夫。

スピーカー端子にダミー抵抗を繋ぎます。
で、この端子。兎に角弱い。ネジの締め過ぎはご法度です。直ぐにネジが馬鹿に成ります。

フォノ入力には発信機を繋ぎ、ダミー抵抗にはオシロを繋ぎ電源ON。
入力には5mV、1kHzを入力します。
真空管が温まったところで、ボリュームを徐々に上げると正常ならオシロに波形が綺麗に映る筈ですが・・・・・・・。
出たらスゴイ。
古いアンプでは片chだったり、左右がそろわなかったり、波形が乱れたり、まあ色々な症状を見せてくれ楽しいと言うかムムムと言うか・・・。

そのような時、焦らずにセレクターSWやその他のSW類を動かして見ましょう。
ほら正常に成ったり、もっと酷くなったり・・・・。
接点の接触不良です。
接点潤滑材を使って修理するのですが、使い過ぎはご法度。
特に真空管ソケットへの使用はかなりの用心が必要です。

この先の症状別の対処法は有り過ぎて書くのは無理。
今回のアンプは接触不良の解消で略直ってしまいました。

此処まで済んだら、もう一度バイアス調整をした基盤へ戻ります。
ACバランスの調整です。
パワー管のグリットへの信号を揃えるのです。
プッシュブルの上下のグリッドにオシロを繋ぎ、上下の信号の大きさが同じに成る様にVR202を調整します。
最後にVR205の調整。
V5(6267)のプレート電圧をV6(6AQ8)のカソードよりも8V低く成る様に調整(正常はプレート77v。カソード85V)。
まあ、この辺の調整は気は心でも有るのですが・・。
電圧の違いが大きい時は、他に原因が有りますので、要チェックです。


LX38

フォノ入力に5mV加え、ボリュームを1/3廻した時の出力波形。
左右の高さも揃っていて合格。
セレクターやVRを廻した時の波形の乱れも有りません。
アンプを軽く叩き、波形の乱れも見ます。ショックで乱れるようですと、どこかの接触不良が考えられます。

フォノ入力ですからRIAAの測定も大切。
入力信号をスイープして様子を見ます。

今回は梃子摺らないで済みました。
2~3時間、通電をしたままで放置。
その後もう一度測定。
OKでしたら、キャビネットに収めて完成です。

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LX38

BLOGネタとしては最適な修理依頼が入ってきました。
僕の仕事は一応メーカー。
結果、同じ物を作ります。
製造過程は一度しかネタに成らない。二度目の製作はアップしてもつまらない。
修理ネタは同じのが無いので面白いのです。

今回、まな板に乗るのは有名なLX38。
真空管アンプでプリメインと言う、かなりの少数派。
でも、歴史の有るアンプで、初代のSQ38から長年続いたアンプです。

後年リバイバルで発売された38はフォノイコライザーが半導体で、チョットなんだかなー?のアンプに成り下がって、時代の移り変わりを嫌と言うほど見せ付けてくれました。

かなり丁寧な使われ方をされていたみたいで、埃を除けばグットコンデション。
と言っても、20年以上経っているアンプです。しかも高温にさらされるプリメインアンプ。

ここ数年は全然使ってなく、最近使いたくなり、メンテを依頼されました。

この様に古くなったアンプを再使用する時には、動作のチェックは欠かせない作業です。

ひとつ間違えると、煙がポッ。その辺なら可愛いですが、ナンカスピーカーが焦げ臭い・・・・・・・。

半導体アンプと違い、DC漏れは無いとお思いですか?

もしそうなら甘ーーーーーい(笑)。
OPTのリークで、タンノイのウーハーを飛ばした方が現実にいます。
ダミー抵抗を付けての動作チェックは欠かせないのです。
古いアンプは何が起きてもおかしくない、の心積もりが大事です。


LX38

オプションのウッドケースを外します。
外すネジは底面の6本。四角い大きなワッシャーで止めて有りますので、すぐに判ります。
そのネジを外したら、アンプ本体をケース前方に引き出します。


LX38

LX38

外カバーを外しました。
カバーは上下の二枚に成っています。
まず、下側のカバーを止めているネジを全て外し、下カバーを外します。

下カバーを外すと、隠れていた上カバーの止めネジが顔を出します。
そのネジも全て外し、上カバーを外します。

内部の状態も大丈夫の様。

もし有るのでしたら、この状態でコンプレッサーの高圧エアーで埃を吹き飛ばします。

真空管アンプ内の電圧はかなりの高圧。
湿気を吸った埃は、リークの原因に成りかねません。
特に、ヘビースモーカーの方は要注意。

このアンプには煙草のヤニは皆無。
修理屋さんには有り難いアンプです。

で、すぐに通電するのは素人修理。
まず、肉眼で徹底的にパーツをジロジロ。
高温で変色したり変形しているパーツが無いかのチェックです。

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パワーアンプ

今抱えている仕事が部品待ち。
只待っているのでは時間のロス。と言う事で、早速始めてしまいました。

今まで使っていた、300Bシングル2chアンプです。
2chと言っても入力は1chですが。

で、今度のアンプ。なぜか真空管ソケットが多い。
入力トランスも2個。

何を考えているかこの時点で判りましたらスゴイ。

勿論、この写真で全ての部品は乗っていませんし、単に叩き台の配置です。
この作業がアンプ作りで一番腕の判る所。ここの配置をミスったら良いアンプは出来ません。
何日掛かろうが、納得するまでその後への進行は禁止。

今回ラグも作ってしまおう、なんて考えているので、図面が出来上がるのはかなり先に成りそうです。

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300Bパワーアンプ

二年半がんばって働いてくれたパワーアンプ。
本来これくらいの使用で問題の出るアンプではないのですが、単にオーナーの我が儘で分解される運命に。

もう一部のパーツは外れています。
もうチョイで完全分解でしたが、オットイケネー。ブログネタ、ブログネタ。

二年間と言っても一般家庭との使用時間の差は歴然。

で、見てください。埃の付着が全然有りません。
密閉シャシ構造ですから出来る技です。

勿論、密閉しても熱的なトラブルはゼロ。

作り変えるアンプは僕の悪戯がいっぱい。

進行状態はこのブログにアップしますが、問題がひとつ。

換える予定のパーツが入荷未定。ムムムムム・・・・・。

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たった今、新しいアンプの納品完了。
先日作ったEL34シングルアンプです。
此れでミッドバスと中高域のホーン郡が同じアンプに。
どう言う訳か、マルチアンプの各帯域を別なアンプで鳴らすと、繋がりに不自然さが出易いのです。
ユニットの違いの方が大きいのに不思議ですネ。

今回のアンプはステレオアンプ×2台。
で、チョット頭を使った使用方法に。
右チャンネルで一台。左チャンネルで一台。こうすればチャンネルセパレーションはモノラルアンプと同じに成ります。
更にスピーカーユニットの能率差も考慮して、高域用の初段管はECC82。ミッドバス用は6072。
此れでゲイン差が6dB強稼げますので、アッテネーターの絞りを少なく出来ます。

つまりステレオアンプのクセに左右のゲインに差が有って、更に出力インピーダンスも違うという、スペシャルアンプが出来ました。
アンプはスピーカーを鳴らすのが仕事。鳴らすスピーカーに合わせるという、当たり前の設計をしただけです。

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ワイドアングル用アンプ

またもや改造依頼のアンプが入ってきました。
元々はワイドアングルを最上に鳴らす為に作られた専用アンプです。

詳しくは
http://hayashilab.syuriken.jp/auvt2503.htm

ところが現在はオイロダインをマルチ駆動に使用されています。
1チャンネルはドライバー用に、2チャンネルはパラってウーハー用に。
これも中々巧く鳴らしています。
でも、作ってから10数年以上経っています。
その間に沢山の優秀な部品が出来てきました。
以前にもお預かりし、CR類は全て交換。

今回は最近僕のお気に入りのOPTへの交換と、ウーハー用はVT25パラシングルにし、2チャンネルアンプへの改造です。
この様に僕の作るアンプは、その後の改造(改良)が出来てしまう為、中々手放さないお客様ばかりです。(だから新しいアンプが売れない、汗)

どうせ改造するのなら・・・・・・・。
僕の悪い癖が出て来ました(笑)



ワイドアングル用アンプ

トランスの取り付け部には、新しくブラケットを作る様。
だったらシャシの強化を図れば一石二鳥。
ご存知の様にVT25は直熱管。
傍熱管と比べて電極が大きく機械強度が低いのが欠点。
其れを補うにはシャシの強度を上げ、真空管に振動を加えない様にするのがベター。

10mm厚のアルミ板。これなら強度、内部損失、どちらも優れています。
さてさて、この後はどうなりますか・・?

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音出し

10日ほど前に完成したEL34三結シングルアンプ。
困った事に、僕の所にはマルチ駆動を前提にセッティングしたオイロダインしかない。
つまり、新しいアンプの試聴が出来ないのです(大汗)。
その辺の事情を知っている常連は『どうするんだろう、10Wでも鳴らすのかな?』

ウーン、まあ出来なくも無いが10Wは15Ω。今回組んだアンプは4Ωでマッチングが取れるように組んで有る。
要は僕の所でどんなに良く鳴っても、お客様の所で鳴らなきゃ全然意味が無い。
と言う事で(本心は単に面倒だったりして、汗)、ぶっつけ本番での音出しです。
アンプと一緒に写っているのはオーナー・・。
(の飼い犬です、ハハ)。

この家はマルチアンプで鳴らされている。
ミッドバスのユニットが4オームなので、其れに合わせて作ったと言うのが本当のところ。
さて、音出しです。


音出し

ジャズファンのオーナー。
早速愛聴盤に針を降ろす。
ナンセ新品のアンプです。今迄サインウェーブの信号しか入れられた経験の無いアンプです。
初めて音楽信号を入れられてさてどうなるか?

いたって普通に鳴り出しました。
僕はニヤッ。

その後ミッドバスを元のアンプに戻し、中高域のホーンシステムに繋ぐ。
此方は16Ω何だけど、能率が高いから平気な筈。

ハハハ、中高域は良くなったけど、ベースが鈍った。

こりゃ、このアンプが2台必要。

『次のアンプを作るのに何日掛かる?』
ピ『三週間下さい。』

引き上げる時、シッカリと『三週間だよね。』ってプレッシャーを掛けられての帰還でした。
勿論、アンプは其の侭其処でがんばっています。

でも、面白いですね。僕のアンプ、何も細工は一切無し。今迄のアンプの方がはるかに凝った回路。

僕の持論、良い音で聞きたければ何もしない事。
その考えで30年以上アンプを弄っています。



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アンプ改造

LCRからCRへの変更と同時に入力端子の配線変更も頼まれました。
このアンプは製作して10数年。その後の僕のノウハウアップに伴って、改造に改造を重ねてきました。
コンデンサー類が斜めに取り付けて有るのもその名残。大きくなってしまったパーツを何とか入れる為の努力の跡と見て下さい。

このアンプを作った当時は、まだ僕のトーンアームは出来ていませんでした。
結果、当時僕のところのお客様での常識は3本アーム。使いたいカートリッジに合わせ、3本を使い分け、3本でも足りなくなるお客様も・・・。

その後僕のアームが完成。其れまで使っていたアームが全て御用済み。
カートリッジもSPU1本で済んでしまった。
そう成ると無用の長物が入力切替SW。
皆さん、フォノ1しか使わないで済んでしまう。
じゃあ、要らない回路を外し、シンプルにして音質アップを図ろうというものです。

一応人様に渡すアンプですから、MMカートリッジの事も考慮に入れて有ります。
そう成ると必要なのがシールド線。
TVのアンテナ線を考えると判ると思いますが、シールド線(同軸ケーブル)の中間接続はご法度。インピーダンスが狂ってしまいます。
高い周波数程この弊害が多いので、高周波では行っていませんが(やってるメーカーも有りますね、汗)低周波(音声周波数)では、皆さん平気で行っています(キャノン等その際たる例)。
でも、目立たないだけで問題が起きているのは事実。

良いアンプは色々と対策をするのではなく、悪い事を如何に排除するかと考えているピンキー君。
入力からダイレクトに初段管に入れるのは大賛成。


アンプ改造

入力セレクターSW周り。
どうしてもシールド線の同軸構造が壊れてしまいます。配線の基本としてNG。
また此処のシールド線の端末処理でハムを引きますので、配線技術のバレてしまう、怖いところでも有るのですが。
今回はこの周りの配線は全て撤去。SWは取ってしまうと穴が開いて見っとも無いので其の侭ですね。


アンプ改造

その初段管のソケット周り。
入力端子はレモ。理想の接続端子です。
此処での配線は2芯シールドを使います。
勿論プリ入力に使う配線と同じもの。そうしないとまたインピーダンスが合いません。
入力端子側はホットとコールドのみ配線。
シールドは根元で切断。
真空管ソケットへはホット(青い線)を直にグリッドへ。
コールド(白い線)は初段管のアースポイント(シャシへでは有りません、EL34のアースの引き回しを見て下さい、 http://hayashilab.blog.shinobi.jp/Entry/163/ )。

シールドは直接シャシアース。
ナゼかは聞かないで下さい。判る人には判る配線です。
アームの入力を3系統にしてハムで悩み、アースの引き回しで苦労した方なら、ピンッと来る引き回しです。



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