平成19年4月18日開店。店主の日々の日記です。
オーディオ用の(低周波用の)真空管は、バイアスを掛けて使うのが普通です。
このバイアス電圧。
コントロールグリッド(第1グリッド)とカソード間にDC電位を与えるものです。

この時の電位。カソードに対してグリッドはマイナス電位。
なぜマイナスにするのか?

では、グリットの無い状態を考えて見ましょう。
そう成ると、真空管は二極管。整流管や検波管と同じに成ります。

此れですと、低いプレート電圧でも電流は流れ放題。
正規のプレート電圧なんか加えたら・・・・・・。

其処で、グリットにマイナス電位を与える事で、電流の流れにブレーキを掛けるのです。

プラスのプレートに向かって突進する電子流。途中にマイナスのグリットが有るので電子流を制御するのです。

此処はシッカリと覚えてください。この後の二つのバイアス回路の説明で、非常に重要に成りますので。

マイナス電位を持ったグリット。この時の電流値は一定に制御されます。
そのグリットに音声信号を加えるのですね。

そう成ると、グリットのマイナス電位は、信号電圧で変動します。

つまり、バイアス電位が変動するのと同じに成りますね。

グリッドにプラスの信号が付加されると、バイアスは浅く成り、電流は増え、マイナス信号が付加されると、バイアスは深く成り、電流値は減ります。

つまり真空管は、電圧を増幅しているのではなく、グリットに加えられる信号電圧で、電流値の増減をしているのです。そう電流値の増減だけです。

此処で、電源のレギュレーションが重要に成ってきます。
つまり電流の増減時に、それに影響されないで、常に同じ電圧を真空管に供給する電源が必要なのですね。

ややこしくなってきましたが、真空管の動作を理解する一番の基本です。
此れを理解しないまま、あのコンデンサーは○○。あの抵抗は△△。あの真空管は□□。と騒ぎ過ぎている様に見受けられるのですが・・。

続きます。

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バイアス


上記の回路。アンプを弄っている方ならご存知の、バイアスの取り方2種類。

左が固定バイアス。右が自己バイアス。
まず真空管の基本動作。俗に言うバイアスを掛けます。

この意味は一般にカソードとグリット間のDC電位を決める事。

真空管は特殊な物を除いて、グリッドの電位をカソードよりも下げて使います。
このバイアス値の設定で、アンプ作りの経験値が判ると言う、かなり玄人好みの値です。

この掛け方に二通り。一つは左の回路、固定バイアス方式。
この場合カソードはシャシに落ちていますのでゼロ電位。
グリッドに専用電源からマイナス電位を与えます。

もう一つが自己バイアス。
グリッドはR1(グリッドリーク抵抗)でアースに落ちていますので、シャシと同電位(注1)。
カソードにはR2がついて、アースに落ちています。
カソードからシャシに向かって電流が流れますので、オームの法則から、カソードはシャシに対してプラス電位を持つので、結果グリッドはカソードに対してマイナス電位に成るのです。

どちらも、カソード電位がグリッド電位よりも高く成っています。

さて、両者に対する軍配は・・・・・?
此処でプレートに掛かっている電圧は、同じとしますね。
真空管のプレート電圧は、シャシに対してではなく、カソードに対して考えます。

固定バイアスは、カソードとシャシが同電位ですので、プレート電圧が其の侭動作点として考えても良いのですが・・・・。

自己バイアス。カソードは結構高いプラス電位を持ちます。
結果、プレート電圧はその分低く成るのですね。
プレート電圧は、諸に最大出力に効いてきます。

つまり同じ電源電圧ですと、最大出力の点で自己バイアスは非常に不利に成ります。

じゃあ、バイアス電圧分だけ電源電圧を上げれば・・・・?
此れが難しい。何故かと言うと電源のケミコン。
その分、耐圧の高い物を用意しないといけません。

耐圧の高いケミコン。中々無いのです。
勿論電源トランスの設計も変わってきますし。

更にカソードは、DC的には電位を持っても、AC的にはゼロ電位で使うのが基準。
それを行うのが、R2にパラレルに繋がっているコンデンサーです。

ご存知の様に、コンデンサーは交流を通し、直流は通しません。
無信号の時(DCしか流れません)は良いのですが、音楽再生中は、カソードにその信号波形がR2の両端に表れます。
その信号をパスするのが、このコンデンサーの役目です。バイパスコンデンサー、通称パスコンと呼ばれていますね。

カソードの電位の変化は、諸に出力波形に表れますので、このパスコンの性能が其の侭出力に表れます。

続きまーす。

注1)自己バイアスの時、グリッドは高抵抗を介してシャシと繋がっていますので、シャシと本当に同電位?

グリッドには基本的に電流が流れません。電流が流れなければ、高抵抗でも電圧ロスが有り得ませんので(オームの法則)シャシと同電位です。

只、グリッドがカソードよりもプラス電位に成りますと、グリッド電流が流れます。此処が危険領域です。

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電源トランス

前回書きましたチョークインプット。実験をして見て下さい。と言っても普通の市販電源トランスでは難しいんですね。

うっかりと、書いてしまいました(汗)。

写真が、僕のパワーアンプに使われている電源トランス。300BでもEL34でも同じトランスです。

カットコアを使った大型トランス。一般市販品にはまず見られません。
昔、カットコアとEIコアのトランスの見積もりを取りました。
価格差は3倍。此れじゃ普通は使いません。

でも、同じアンプで比べると・・・・・。


電源トランス

此れが電圧と電流容量。
B巻線に注意して下さい。
500V100mAと成っています。
僕はこのトランスで、300Bなら70mA。EL34でも60~65mA流します。
勿論ステレオですから2本。更に初段管に5mAずつ。

トランスの定格の100mAに対してかなりのオーバー。

コンデンサーインプットなら持ちません。チョークインプットですから使える電流値なのですね。

勿論、整流後の電圧は400V強。

で、この整流後の電圧。プリなら抵抗で落とす事も出来ますが、パワー管にはご法度(レギュレーションが落ちてしまう)。

つまり、欲しい電圧に対して、ピッタリ出せるトランスが必要なんです。
そう成ると、市販のトランスでは、帯に短し襷に長し。
どうしても、電源トランスは特注品を使ってしまいます。

よく、パワー管の音質にあれはこうで、あいつはああだ。なんて言われていますが、散々動作点を試したのでしょうか?

B電圧と電流値で、何とでも変わるのが真空管です。
真空管の定格表や動作点のカーブも、ある程度は役に立ちますが、最後は使ってみないと判りません。

更に、最近の真空管と20年以上前に作られた真空管。同じ型番でも動作点の違う物が結構見受けられます。

今の真空管を昔の動作点で働かせ、ヤハリ昔の方が良いな。なんて簡単に口に出来ないのです。

真空管の寿命を怖がって、電流値を絞っているアンプも見かけます。
そんなアンプ、演奏家が空腹で演奏している様で・・・・・。
電流はたっぷり流しましょう。
放熱さえ気遣えば平気です。

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昨日の続きです。

動作としては問題が無いのに、二種類のバイアス抵抗のつけ方。

答えを先に言っちゃいますね。僕が使うのは右側の抵抗2本タイプ。

1本の一番拙い点。
新しいうちは良いです。長期の使用で片側のパワー管が逝っちゃったとしますね。
すると、電流値は半分に成りますので、バイアス電圧も半分に。
結果、未だ逝っていないパワー管はバイアスが半分に成ってしまうので、定格電流を大幅にオーバーして電流を流します(バイアス値がバランスするまで流します)。

つまり、逝っていない真空管まで道連れに・・。

片側の真空管が完全に逝かなくても、ぼけて電流値が下がったとしますね。
その場合も、反対側の真空管が頑張って、電流値を上げてバランスします。
こう成るとアンバランス電流は・・・・・・・?


ご存知の様に、プッシュプルのOPT、アンバランス電流を嫌うんですね。上下の電流差2~3mAしか許されていません。

バイアス抵抗が1個ですと、上下の合計電流は判りますが、夫々の電流値は・・・・・・?

つまり片側がぼけていても、気付かないで使っている可能性が高いのです。

勿論、此処へ使う抵抗は、上下でペアが必要。

僕が組む時は、抵抗値を測定してから組んでいました。

長期使用したアンプの電流値測定は、この抵抗値の測定から始めないといけないのです。

プッシュプルと簡単に言いましても、正確なプッシュプル動作をさせるには結構大変。

その点を、一切気にせず、気ままに組めるシングルアンプは有り難きかな、なんですね。

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自己バイアス


鋭い方は、この図面を見ただけで、今日のネタが判りましたよね(笑)。
標準的なプッシュプル回路です。

どちらも自己バイアス。

違う点は、バイアス抵抗を1個で済ますか2個つけるか。
音色的には差が無いと思います。
パスコン(注1)の質が悪いと、左の方が良い音質かも知れません。

理論的に、二つのカソードに現れる信号は、逆相で同レベル。
つまり1個の抵抗にすると、両信号は打ち消しあって、信号レベルはゼロ。
極論を言えば、パスコンは必要有りません。

対して右の回路。
逆相の打消しが無いので、パスコンの働きは、非常に重要に成ります。
パスコンの種類で、音がコロコロ変わります。

さて、僕はどちらを使うでしょう?

答えは明日。


注1。
パスコン、正しくはバイパスコンデンサー。
カソードに入っているバイアス抵抗に、パラレルに入っているコンデンサーです。
此れの働きは、非常に重要です。

真空管の動作原理。
カソードは、シャシに対して直流的に電位を持ち、交流的には同電位(自己バイアスの場合)。
つまり、直流的に電位を持たせる為のバイアス抵抗。その両端に現れる交流信号(オーディオ信号)を短絡させるのがパスコンの働きです。
現実的には、理想コンデンサー(注2)は有りませんので、カソードの交流電位はゼロには成りません。
また、計算上のカットオフ以上の周波数でも、コンデンサーのリアクタンスがゼロには成りませんので、どうしても交流信号は残ります。

注2。
理想コンデンサー。計算上のリアクタンスだけを持ち、それ以外の要素(インダクタンス、その他)を持たない理論上のコンデンサー。

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真空管交換

僕の作業机の上のアンプ。製作してから20年近く経ちますが、いたって健康体。

まあ、流石の使用時間で300Bが若干ぼけていますが・・・。

このアンプのオーナー、使用時間は半端ではなく(笑)。

今回チェックと同時にパワー管の交換。そう成ると・・・・・・・。

僕の所での実験やお客様の所で、300BよりもEL34の方が良い結果が出ている。
要はEL34の方が色付けが少ないのです。300Bの音が聞きたいのではなく、レコードの中に入っている音楽を聞きたい方が多い僕のお客様。

迷う事無くEL34へ変更です。

こんな時、本当に良い設計をしたと自分でも感心する電源トランス。
特注トランスです。電圧は僕の指定通り。

ヒーター(フィラメント)電圧を6,3Vで設計したのです。
此処で5Vで設計したらアウト。EL34は使えません。

300Bは交流点火ではハムを引きます。結果直流点火。
6,3Vを整流して5Vを引き出すのは、非常に簡単。
逆に5Vを整流して5Vの直流を出すのはかなり難しい(経験者は判りますよね)。

僕がこのトランスを設計した時、将来を考えた。
300Bは何時まで続くか判らない。EL34や6550は当分作り続けられるだろう。
真空管の供給が絶たれただけで、このアンプが使用不能では余りにも情け無い。

そんな考えで6,3Vをチョイス。
現在も300Bは作られ続けているので、当初の目的とは違った目的での真空管変更。

6,3Vでの設計。大成功でした。

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本日、初めての方の来店。
なんと、伊藤喜多男氏製作のアンプを持参。

長年使ってきたので、健康チェックを・・。

流石に氏の作ったアンプ。経年変化は殆ど見られず・・。

レコードを聴きながら、氏の思い出話に花が咲き・・。

その内、持参のアンプへのほんの少しの不満点。不満と言う程のものでも無く、要はもうチョイこう言う鳴り方に成れば・・・。

ピ『試してみますか?』

初めてのアンプでも、氏のアンプなら回路は判る。
動作点をチェック。僕の使う動作点とはチョイ違う。この辺が作者の癖の出るところ。

どちらが良いとは、一概に言えない。

で、一部の回路を手直し。勿論いつでも戻せる範囲。
自分のアンプならこの手直しで音がどの様に変わるかは直ぐに判るけど、人様の作ったアンプ。100%の自信は無い。

ピ『試聴してみて下さい。望みの方向へ振ったつもりです。気に入らなかったらいつでも戻します。』

さあ、どうなるかなー。凄い楽しみ。

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アンプ改造

暫くぶりに作業机に乗った『ピンキーガレージアンプ』。ホント、彫刻屋の馬鹿。本当ならLiberoってかっこよく入っている筈だったのに・・・・。

まあ、音には関係ないから・・・・・。

今迄、このアンプ。ドライバーとツィーターを駆動。と言っても入力はフルレンジで入ってくるので、入力トランスは1個で済ませていた。

今度はそうは行かない。完全独立動作。

入力トランスを1個追加。で、此れが高い。
全部で4個追加なので、かなりの出費。

でも、此処をケチってしまうと、今回のマルチアンプ構想は成功しない。

でもねーーーーーー。このトランス、真空管1段増幅更にトランスを背負わせるよりも高い。

音質が良いので仕方が無いか・・。

で、このアンプ、ツィーターとドライバーをドライブするのだけれど、其々のユニットのインピーダンスが違う。

ドライバーは15Ω。ツィーターは8Ω。結果出力トランスの二次側も其れに合わせて16Ωと8Ω。

さて此処で問題です。
どちらのchにも同じ入力を加え8Ωの出力を2V出る様に入力電圧を調整しました。
それでは、16Ωのchの出力電圧は何ボルトでしょう?

今日は答えを書きません。  明日(笑)。

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