平成19年4月18日開店。店主の日々の日記です。
8月ももう終わりなのに残暑がきつい・・。
そんな訳で今日も薄暗い時間から作業を開始です。





ターンテーブルの軸受け。
何度作っても緊張する部品です。
単に切削だけなら簡単なのですが、内部に砲金のスリーブを圧入。

内部に入るオイル量を増やす為に、スリーブは上下2分割。
底の部分には鋼球を納める加工。

全て、滑らかにターンテーブルを回す為の物です。
昔は、砲金の無垢で作りました。重量を少しでも重くしたい。
そんな目的だったのですね。
ある日実験。砲金は鳴き易い金属です。鳴き方も耳に五月蝿い。
そんな訳で、鳴き難いアルミに砲金スリーブと言う構造にしてみたのです。
掛かる工数は倍以上。
でも、気に成ったらやって見るしかない。

結果、間違いなく静かに成りました。
それ以来、アルミに砲金スリーブを焼き嵌め。と言う製法が続きました。
この場合はスリーブが一本物。上下が一体です。

構造を考えると判ると思いますが、砲金スリーブに掛かる横方向の力は、上下端に一番掛かります。中間部には殆どかかりません。
ならばスリーブを上下に分割。中間部分にはスリーブを入れない構造にしたんですね。
目的は先にも書きましたオイル量の増加。

たかが軸受けです。でも其れ成りに歴史を持っています。
今の形に成ってから、僕は一切疑問を持たなく成りました。
フリクションが少なく、長寿命。

親子三代使える軸受けです(笑)。

勿論、オイル交換はきちっとするのが条件ですが・・。



推奨オイルは、モーターオイル(エンジンオイル)の0W30~10W40程度の粘度です。
此れよりも粘度が高いと低温時に回り辛くなる可能性が有ります。
また、糸の寿命からもお勧め出来ません。
グレードはエンジンと違い、きつい条件では有りませんので、極普通の市販品で大丈夫です。
新品時は最初が半年、次は1年後。その後は2年間隔の交換で十分です。


昔々、僕が薦めていたQRKのターンテーブルを中古で求めた方が居りました。
地方のオーディオショップから購入されたのですね。
オーバーホール済み。と言うふれ込みでした。
僕がQRKに詳しいのを知っていた其の方は、僕へチェックを依頼。

開けて見て目が点。
軸受けのオイルは完全に変質していて。シャフト先端も異常磨耗。
それ以来、僕の所で販売した以外のQRKは、一切チェック等を受けるのを止めました。
僕の知っている範囲では、信用できる中古販売業者を知りません。

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旋盤加工は昨日で完成しました。
で、今日はプレーヤーの製作で一番緊張する作業。

ターンテーブル軸受けに、砲金スリーブの圧入です。

昔は焼き嵌めでやっていました。

この場合、スリーブは上から下まで繋がっている1個物。

ターンテーブル軸受けに掛かる力を考えましょう。


軸受けの構造です。赤斜線の部分が砲金製スリーブ。
上下に分かれているのが理解出来ると思います。
作る方としたら、上下一体の方が簡単です。

何故面倒な2ピースにしたのでしょう?

ターンテーブルにはDD方式でなければ、横方向の力が掛かります(糸やベルトで引かれる、アイドラーで内側から押される)。

そうすると、シャフトの上半分は糸で引かれる方向への力が掛かります。
下半分は・・・・・・。
反対側へ力が加わります。
上下で逆方向へ力が加わるのです(端ほど強い力で・・)

そう成るとシャフトの中間地点。横方向の応力は有りません。
つまり中間点には軸受けが無くても平気なのです。
勿論軸受けが有っても良いのですが、オイル攪拌ロスが出ます。
更に軸受け部のオイル量が稼げない。

同じ使用条件でしたら、オイル量は多い程良いのは理解出来ると思います。
スリーブを無くして、オイル量を増やしたかったのです。

軸受け上側。


上の凹んだ部分は、溢れたオイルを貯める所。オイルを少量入れて、シャフトを差し込みます。
直ぐに抜き取り、上のオイル溜めにオイルが無い様でしたら、足りていませんので追加。
何度か追加を繰り返し、上迄オイルが来たら適量です。

下側。


スリーブは可也奥迄圧入されています。勿論治具を作って最適位置まで圧入。
スリーブの下側は、得意のダブルボール軸受けのスペース。

穴の下側に上と同じ様な凹みを作って有るのは、此処へOリングが入ります。
適切なつぶれ代で掘って有りますので、20年以上使われている軸受けのOリングも未だに使用可能(つぶれていない)。
と言う訳で、あと何年持つか不明(笑)。
十分なストックを持っていますが、僕が死んでも大丈夫。P20と言う標準品です。
ネットでも購入出来ます。

ダブルボール構造にしてから、一切問題がなくなりました。
当初は心配で、何度か鋼球をチェック。
当った痕が見つかりません。万が一磨耗しても、鋼球の向きを変えればお終い(笑)。
交換としましても、規格品ですので1個数十円です。
鋼球は上が12mm。下が10mmです。此れもネットで購入可能。

此の軸受けで寿命を感じるのはOリングと鋼球だけです。
定期的に(最初の1年間は4ヶ月に一度、その後は2~3年に1度で大丈夫です)オイル交換さえしていただければ、他の部分の消耗は略有り得ません。

此の構造で、親子三代使えますって言っていますが、可也遠慮しています。
オイル交換だけしていただければ、半永久的に使えます。

ダブルボールのもう一つのメリット。
出来立ての軸受けは、どうしても金属粉が出ます。
此の金属粉。ボールの間の隙間に落ちますから悪さをしないのですね。

此の軸受けのたった一つの欠点。
軸受け本体と底部の中心がピッタリと合わないとヤバイ。

その辺は加工精度を上げて有りますので、個人で底を外してメンテをしても大丈夫です。
差し込む時の精度に驚かれると思います。




大事な追記。
上下分割のスリーブの場合、圧入後の中心の穴の直線性は保証出来ません。
そんな訳で、スリーブは目標値よりも小さ目の穴を開けて圧入。
圧入後にリーマで指定の穴径へ仕上げます。

最近の悩み。僕の軸受けの馴染が進まない・・・。
理由は、結構馴染んだな。と思った頃、其れで良いよ。って言って持って行ってしまうお得意さん。
もう出しません。

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突然ですが、好評を頂いておりました、ターンテーブルシートの販売を休止させていただきます。
今迄、材料を購入していた店が閉店してしました。
同じ材料の購入が不可能に成ってしまったのです。

まだ若干の在庫は有りますが、これはこの先のプレーヤー購入のお客様用としたいと考えます。

この仕事、自分の努力ではどうしようもない事が多々起きてしまいます。

新しいシート材料が見つかる迄は(手持ちが無くなる迄は)再発売は有りません。
事情を御察し下さい。

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今朝一番で作りました。



お馴染、ターンテーブルシート。
此の材料を使い出して10数年経つのですが、未だに此れを凌ぐシート材料が現れません。
素材は秘密(お馴染さんは知っている、笑)。

で、4色選べるのです。色が変わっても音は同じですし、レコードを乗せちゃったら見えないんですけどね・・・・。

ブラウン、ベージュ、ブラック、レッドの4色です。
発売当時はブラウンが一番人気。続いてブラックとベージュが同じ位でレッドの人気は最低。
早い話が使っていたのは僕だけ。

ところが最近、此の様子が丸ッ切り変わったのです。
ダントツに一番人気がレッドなんですね。

最近高齢者に(僕よりも10歳は上かな?)もレッドの注文を受けました。

確かに市販品にレッドは見当たりません(早い話が、無難な線のものばかり)。
で、中々冒険が出来なかったのでしょうが、僕の所で来る度にレッドを目にする。
段々と抵抗が無くなったんでしょうね。

でも、レッドのターンテーブルシート。お洒落でカッコイイですよ。

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アーム関係が略終わり(カートリッジの取り付けは出荷直前にします)、ターンテーブル関係の仮組みです。



狙い通りに組みあがったターンテーブル。写真では見えませんが軸受けとシャフトのチェックがメインです。



ターンテーブルとボードのクリアランスは1mm。
昔は此処を2mmにしていました。精度を出す自信が無かったんですね。
自分でも気づかないうちに、いつの間にか1mmに設定してしまってアームとの高さが合わない、って悩んだりして・・・(笑)。
昔の図面を見て『あ、以前は2mmで設計していたんだ。』って気付いたり・・。

以前にもアップしましたがこの軸受け。親子3代で使っても平気です。
磨耗する所は交換が簡単(20年近く使っていますが今の所磨耗はゼロ)。しかもその部分は一般市販品(単なる鋼球)。
それ以外は定期的なオイル交換さえしてもらえれば磨耗しません。

昔からの機械屋さんの経験則。
『シャフトの直径の2,5倍以上のシャフト長(軸受け長)が有ればシャフトも軸受けも磨耗しない。』
だから薄型モーターの寿命って短いのです。

このターンテーブルのシャフト、16Φ。其れに対して長さ(軸受けと接している部分)は75mm。
壊せるものなら壊してみろ。と言う設計なのです。






軽く追記。
この軸受け、基本的にはアイドラー次代と共通です。
そのアイドラー次代に購入して頂いたお客様。今の仕様(ギヤボックス、糸ドライブ)に成ってもターンテーブルシャフトと軸受けは交換していません。
度重なる改造の為の何度ものドッグイン。

最近、お二人の改造依頼を受けてシャフトを引き抜きました。
もう此処迄馴染んだら宝物です。シャフトの表面の輝きは切削加工では出来ないもの。
長時間掛けて馴染ませた物にしかない輝きでした(けっしてピカピカではない味の有るひかり方です)。
シャフトを抜く時の感触もナントも言えないものです。

そんな事を知っている拙い常連さん達。
僕の使ったシャフトと軸受けを欲しがる。

そんな訳で僕の軸受けとシャフトがあの感触を得るのには・・・・・(涙)。

で、更に追記。
此処迄書いちゃったんだから・・・・・。
ターンテーブルの軸受けとシャフトに関しては僕が生きている限り保証します。

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昨日は何ヶ月も待って頂いたお客様への訪問です(本当に最近の仕事のたまり方は・・)。
目的はターンテーブル(プラッター)の交換。

アイドラー時代から僕のターンテーブルを愛用してくれていて、糸ドライブ(モーター内蔵)、ギヤボックスドライブとグレードアップを繰り返して来ました。

先日アップしたシャフトのオーナーです(そうか、今考えて見るとあのシャフトはアイドラー時代から使っている物、と言う事は20年近く使っている、笑)。

取り付け穴を4個に増やしたシャフトを軸受けに差込、其の上にターンテーブルを置き4本のネジでしっかりと止めます。

今回の改造は単なるターンテーブルの交換。それ以外は一切手を加えていません。

モーターの電源を入れて単に廻しただけでオーナーの声。『静かに成った。』
使っている方だからこそ判る変化ですね。僕には判らなかった(笑)。

レコードに針を落とす。今度は僕にもハッキリと判る。
静かに成った。ピアノッシモが美しい。これと比べると(昨日は聞いていない、でも何度も行っている家なので前の音は覚えています)以前の音は汚れていた。

お客様はニコニコ。またレコードを聴く時間が増えそう。

たったターンテーブルの交換だけでこの変化.
アナログの奥の深さと凄さを感じた一瞬です。



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本日は朝一番でお出かけです。
外注先へアルマイトの上がった物を引き取って、その後御馴染のお客様宅二件訪問。
一件目は30年以上使ったアンプのノイズ。お預かりして来ました。

もう一件はターンテーブルを釣鐘型からフラットタイプへの変更(沢山の方にして頂きました)。
と言っても単に交換とは行かないのです。
シャフトフランジの加工が必要。シャフトを引き取りに伺ったのです。
従来の取り付け位置でフラットタイプを作ればこの変更は無用。

でも、少しでも音質向上の可能性が有るのなら、変更は厭いません。

長年使われたターンテーブルを外し、シャフトを引き抜くと・・・・・・。



思わず惚れ惚れ。切削痕が綺麗に無くなり鏡面状態。此処まで馴染んだら宝物です。
相手側の軸受けも指でなぞるとつるつる。

シャフトを抜く時の滑らかな感触は感動モノ。親子三代使っても大丈夫な軸受けを実感。
僕のはまだまだだなー(涙)。

で、フランジの取り付け穴。



従来はM3のボルト3本で取り付けています。
昔、プレーヤーの調整をしていた時、取り外しが面倒でこのネジを外した侭で調整(ターンテーブルの重量でぐらつきは有りません)。
調整完了してネジで止めた時の僕は目が点。
ナンデ?。明らかな音質向上が有ったのです。

そんな経験が有ったのでフラットターンテーブルはM4、4本で止めています。
此れにも逸話が有りまして、手持ちのM4に丁度良い長さが無くてフランジの厚み(10mm)の半分までしか届かないネジで聞いていました。
其の後、5mm長いネジを入手(フランジの厚み全体で締められる)。
此の時もナンデ?

つくづくとシャフトとターンテーブル(プラッター)の結合の重要性を味わったのです。

このフランジのついているシャフト。フランジとシャフトは一体物。
つまりフランジの径(80mm)の丸棒から16mmのシャフトを削っているのです。
コストを考えたら・・・・・・(大汗)。

そう成ると市販プレーヤーのシャフトとプラッターの結合。テーパー結合なのは・・・・・?






このシャフトを使われている皆様へ。
これとペアの軸受けと合わせて略半永久的に使用可能です。

ただし、オイル交換のメンテナンスだけは行って下さい。
新品からは半年。その後2~3回毎年。
その後は3年に一度。
10年以上使いましたら底の鋼球もチェック。万が一磨耗痕が見られましたら鋼球の向きを変えて(当る場所の変更)組み直して下さい。勿論新しい鋼球に交換されても結構です(ネット通販で購入出来ます、上下の2個とも交換しても数百円です)。

また、アイドラー時代の軸受けを使われている方には、現在のダブルボール軸受けへの改造をお勧めします。軸受けをお送り下さい。¥10000(外税)で改造をいたします。

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今日はターンテーブルの軸受けを作成。
勿論、今迄とは少々仕様を変えている。工作精度を上げないと難しい構造だけどチャレンジするには最高(自己満足、汗)。
1/100mmでの誤差が問題になる構造。でも巧く行けば可也の物に成る。

今日の午後は此れに掛かりっ切り。
チョットでも削り過ぎたらパー。
本当に微妙に削り進める。

見事に成功。

で、此処で終わったら話がつまんない。

先のブログを書きながら構造をもう一度考えていた。
イケネッ。ダブルボールの上側をシャフトの真ん中に収めるのが難しい(要は組み立てでの問題です)。
真ん中に収まれば従来の軸受けを越えられる。
どうやってボールを真ん中に(あの穴の中、手で位置決めは無理)。

其処でピコン。樹脂でガイドを作れば良いんだ。勿論ガイドは中に残った侭に成るけど悪さはしない。

こんな構造を考えている時が一番楽しいのです。





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