平成19年4月18日開店。店主の日々の日記です。
先にアップしました、アルテック形、ムラード型共に有る問題点。
続きが遅く成ったのは、市販のアンプを色々と調べていたのです。

流石にメーカー製。僕が調べた限りでは問題の有るアンプは有りませんでした。逆を言うと問題発生は僕の作ったアンプだけ・・・・・・(大笑)。

あ、勿論僕のアンプはそれに対応しているので問題は有りません。

この位相反転回路共通の問題点。カソードの電位が高いのです(シャシに対して)。
この真空管の電流を減らせば問題が無いのですが、僕の様に多め(真空管の規格よりは十分に少ない)に電流を流しますと、カソード電圧が100Vを超えちゃうんですね。

一般に真空管のヒーターは電位的にシャシアースされています。

問題は真空管の規格。ヒーターとカソード間の耐電圧は100V。
つまり、シッカリと電流を流すと100Vを超えますので、ヒーター、カソード間の絶縁破壊の可能性が有るのです。此れは避けたい・・・・。

そんな訳で、僕のアンプはヒーターの電位をシャシと同じにしないで+(数十ボルト)にして、カソードとの電位差を100V迄行かない様にしています。

暫くぶりに自分の作ったアンプを見て思い出しました(汗)。

で、皆さんんが知りたいのは此の違う位相反転回路の音質は?ですよね。
沢山実験をしました。真空管を替えたり動作点を替えたり。
軍配はムラード型に上がりました。
僕の仮説では、アルテック形は出力インピーダンスが上下で違いますので、その影響かと・・?

まあ、下側がカソフォロですので・・・・・。

昔々のつまらない話。喜多さんの所へ遊びに行きました。
MJ誌に出たばかりのAMラジオが机の上に乗っていたんですね。
喜『ピンキーさんは最近何を作ったんだい?』
ピ『AMチューナーを作りました。』

喜多さんのラジオの最終段はカソフォロですよね。って僕が言ったら
喜『カソフォロは音が悪いなー。』
ですって(笑)。

僕が使った最後の市販プリアンプ。オンライフのUー22。
残留ノイズが多いのでCRを交換しようと秋葉へ買い出しに行きました(あの頃の秋葉は楽しかった)。
当時の親父さんたちは、癖は強いけどムチャ詳しい。
で、僕が色々とCRを買うので話しかけて来た。
何を作るの?
僕が目的を言ったら、U22の回路を知っていて、最終段のカソフォロを止めちゃった方が良いよ。
僕は『出力インピーダンスが上がってしまうのでは?』
親父さん『プリとパワーの間、何メートルも無いだろう。兎に角カソフォロは止めな。』
改造する時の定数迄教えてくれて(今考えると凄い人だったなと・・)、帰宅する成り直ぐに改造。
出て来た音楽。親父さんに感謝・・・・・。

拍手[5回]


ダウンロード

今迄にアップしたPP考とか今回のアップ。アンプを作らない方には丸っ切り無駄な時間に成りますので飛ばして下さい。

PP考にもまだまだ続きが有るのですが小休止。
基本的に真空管にはバイアス電圧と言う物が有ります。真空管のアイドル電流を決める大事な電圧です。

で、此処の基本を忘れると話がごちゃごちゃになりますので、老婆心ながら・・・・。
真空管の各電極の電圧(データーブックの電圧)は、対シャシ(対アース)では有りません。此処の所を間違えると先に進めなくなりますので・・。

ではどこに対しての電圧かと言いますと、カソード(陰極)に対しての電圧です。
基本的にカソードの電位はシャシと同じって考えるのですね。その為第一グリットの電圧が-表示に成るのです。
自己バイアスの場合、グリットはシャシと同電位に成りますので、-にするにはカソードをシャシに対して+にする必要が有ります。

此れで最初にアップして有るバイアスの違いによる回路の違いが理解出来ると思います。
固定バイアスの場合は、カソードをシャシと同電位にしますので、グリットへは別設置の-電源が必要に成ります。

-電源が必要に成るだけ、固定バイアスの方が高級な回路と考えている方が殆どです。
メーカー製のパワーアンプも固定バイアスを採用している物が多いですね。

自己バイアス回路は、-電源を使わないで、カソードにバイアス抵抗を入れます。
此処に電流が流れますのでI(電流)×R(バイアス抵抗値)の計算式(オームの法則です)で、シャシに対して+の電位に成ります。グリットはシャシと同電位ですので、カソードに対して-電位に成りますので、此れがバイアス電圧に成ります。

真空管のばらつきが皆無でしたら要らないのが固定バイアス回路に入っている可変抵抗。
真空管の電流は、バイアス電圧に対して凄く敏感ですので、-電圧を調整する様にしているのですね(マッキンの240や275は此の可変抵抗を省略していますので、真空管のセレクトをしないといけません)。

で、自己バイアスのセルフ機構(笑)。チョイ電流の流れ易い真空管とします。
電流が増えますのでバイアス抵抗に掛かる電圧も大きく成ります。と言う事はバイアス電圧が上がった事に成りますね。バイアス電圧が上がりますと電流は減るのです(正しくは-電圧なので下がる)。
バイアス電圧ってブレーキみたいな物なので、電流の量が増えるとブレーキが掛かるのです。
自己バイアスってセルフバイアスとも呼ばれています。
その様な訳で、真空管のばらつきをある程度まで抑えてくれます。

固定バイアスの場合い、真空管の使用時間によって内部抵抗値が変わりますので、度々可変抵抗の値を調整する必要が有ります。

昔の経験ですが、LUXのアンプでごく普通に1年間使用。念の為にアイドリング電流を計りますと冷や汗ものでした。
其んな訳ですので、ペアー管なんて信用できません。新品時のペアーであって、半年も使えばどうなっていますやら・・。

自己バイアスは、真空管の内部抵抗値が低く成ってもセルフ作用で暴走をかなり防ぎます。
固定バイアスは、その作用が有りませんので、真空管の特性変化に対応が出来ません。

そんな訳で、僕のアンプは自己バイアスを長年採用しています。


もう、時効と思われますので・・・・・・。
僕の店を開けて数年間。LUXとは良い付き合いをさせて貰いました。A3700のLUXKITは日本で一番売ったと自負しています(笑)。
当時のLUXは固定バイアスだけでした。
ある日LUX社の関係者(開発に携わっていた)が遊びに来ました。
で、彼曰く『今度の新型アンプは自己バイアスなのです。自己バイアスの方が音が良いですねー。』
ピ『僕はズーっと自己バイアスですが。』
L『エッ、そうだったんですか?』

僕はメーカーが固定バイアスに固着しているのには音質では無くカタログデーターの所為だとばかり思っていたのですが・・・・・。

拍手[2回]


只今、作図の真っ最中。
ブロックケミコンを外した穴を塞ぐメクラ蓋。



此処を塞ぐのです。
真上から見るとこんな感じ。


ケミコンの間隔を詰める為に、取付穴(ネジ穴)を捻っています。
感覚としては45度と思っていたんだけど・・・・・。

LUXのバカ。微妙に45度と違うんですね。
と言う事で、三角関数は使えなく成りました。
三平方の定理を使うしか有りません(中学校時代、まじめに勉強をしていて良かったーーーー)。

一般でしたら、薄い紙をあてがって、鉛筆を横にして擦りトレースするのが簡単です。
一応、仕事ですからねー。そんないい加減に作るのはダメなんですよ(自分自身に納得が行かない)。
キチンと寸法出しをして、フライスでピッタリの穴を開けたいのです。

アルミ板が到着するのは今週の金曜日。其れ迄に書き上げれば良いんですけどね。

何度も実測。周りの部品が邪魔。と苦心惨憺で実測完了。
捻っているのは45度でした。ただし上下と左右のケミコンの間隔が違っていました。LUXってデザインには物凄くこだわるのですよ。その為に内部配線を可成り犠牲にしてますけどね(プリアンプが特に)。

拍手[5回]


例のPPパワーアンプ。只今の状態。


大きな穴が4個。無条件で交換です。
外した部品は・・・・。


ブロックケミコンが4本。一般電子パーツで一番寿命が短いのがコレなんですね。
ケミコンの寿命は使わなくてもダメなのです。
昔付き合っていた測定機屋さん。
新品ストックでも10年間経ったら処分する。と言ってました。
その位信用度が低いのですが、替わりに成るコンデンサーが無いのです。
小型で大容量と成るとこれを使うしかないのですね。

外す前にLCRテスターでどの程度劣化しているか調べました。4本共正常値。でも交換です。
LCRテスターでのテストを信じられるのは精々10年程度。
テスターって内臓電池で測定しますよね。つまり数ボルトしか掛けないでの測定なのです。実際の使用電圧の数百ボルトを掛けた状態は不明なのです。
それを計る測定器よりもケミコンの方が全然安いですし、現在のケミコンの性能は当時の物と比べ物に成りません。

勿論、交換するのは此れ・。


最近の僕が大のお気に入りのコンデンサーです。
寿命もとんでもない長さをギャランティーしていますし・・。

問題は此の開いた穴。一番簡単なのはケミコンを外さずに配線だけ外して、新しいコンデンサーを内蔵する。
で、オーナーの方は『折角なのでアルミ板でメクラ板を作る方法を・・・。』
直ぐにアルミ屋さんヘ発注を掛けたのですが、その翌日から夏休み。
そんな訳で中断しています。



拍手[4回]


エーーー、お約束のムラード型位相反転回路。

ダウンロード

先のアルテック形と比べますとチョイややこしい動作に成っています。
位相反転段の真空管が1本増えて2本に。

V2の動作はすぐに判りますよね。普通の増幅段です。
問題はV3の動作。
グリットはコンデンサーでアースされていますので、信号レベルはゼロです(AC的にゼロ)。

じゃあ、入力信号は・・?
V2とカソードが繋がれていて、パスコンが有りません。
つまりグリットを振るのではなくカソードを振るんですね。
真空管の入力信号レベルは、カソードとグリットの相対的な電位です。
要は、グリットを振ってもカソードを振っても同じ。
V2へ+信号が加えられたとします。V2のプレートは-に成りカソードは+に成ります。
そうするとV3のカソードも+ですよね。
つまりV3のグリットは動きませんからカソードから見たらグリットが-と同じ事に成ります。
グリットが-ならV3のプレートは+信号。
結果、V2と3の出力(プレート)信号は逆相に成ります。
この回路の良さは、位相反転段にもゲインが有る事です。
で、問題は、グリットを振った時とカソードを振った時のゲインに差が出るのですね。カソードを振った方がゲインが僅かに下がります。
つまりV2と3では出力に差が出るのです。
それを修正する為にR2と3の値を替えて(R3の方をR2よりも大きくする)上下の出力を同じにします。
と言う事は、発振器とミリバル(又はオシロ)が無ければR2と3の値の調整は出来ません。
LUXはR3に半固定抵抗器をシリーズに入れて調整出来る様にしています。

LUXはなぜかクリティカルな動作点を使うのが好きで、この様な調整が必用なんですが、V2と3の動作点に穏やかなポイントを使えば固定抵抗器で大丈夫です。

さて、代表的な位相反転回路を二つ紹介しましたが、このどちらにも共通した問題点が有ります。
僕の知る範囲では、この対策をしているアンプを知りません。

其処の所は・・・・つづく。



拍手[3回]


チョット火がついちゃいました。こんな事を考えている時って凄く楽しいのです(変人)。
PPアンプに必ず必要なのが位相反転回路。よくよく考えると僕の逆相アンプもPPの変形とも考えられます。

つまり上下のパワー管に逆相の信号を加える様なのです。逆相信号を作る方法は色々と有りますが、一番簡単(単純)と言われているアルテック形。


ダウンロード

位相反転段は1本の真空管で行います。
真空管の基本的な特性。グリッドにプラスの信号が加えられると、カソードも同じ+信号が出て、プレートには逆の-信号が出ます。
それを利用して、カソードとプレートから信号を取り出せば逆相信号を作れる。

真空管の基本中の基本を利用しているのですね。

で、この回路の場合、カソードフォロアーと同じ様な動作に成りますので、ゲイン(増幅率)は1以下に成ります。
そう言う訳ですので、NFを掛けるアンプは初段管にゲインの大きな5極管を使う場合が多いです。有名なダイナコMKⅢなどがそうですね。
位相反転段のカソードには高抵抗値が使われますので、カソード電圧が高く成ります。
初段のプレート電圧を、このカソード電圧よりも低めに設定して、初段と位相反転段は直結(コンデンサーもトランスも通らない)で作れます。
僕が最初に作ったPPアンプもこの回路でした。
NFを掛けなく、パワー管の感度が良ければ双三極管1本で作れるのも魅力です。

次回はムラード型をアップします。


位相反転段のプレート負荷抵抗とカソードバイアス抵抗の値は同じに成ります・

拍手[4回]


ここ何十年もシングルアンプばかり作っているのでプッシュプルを作れないのではないか? なんて思われているのかな?

中学校時代に初めて作ったアンプはシングルでしたが、その後はずっとプッシュプルばかり作っていたのです(笑)。

プッシュプルの良い点は、兎に角パワーが稼げます。最大出力が一桁では完全にパワー不足って当時は思っていましたので・・(ぼくにもそんな時代が有ったのです)。

で、ポチポチと僕なりのプッシュプルの作り方をアップしようかなと・・。

ダウンロード

パワー管の自己バイアス抵抗の使い方です。
上の回路は2本の真空管に1本の抵抗で済ませています。
下の回路は其々にバイアス抵抗を付けています。電気的にはほぼ変わりません。うるさく言うと上の回路の方がカソードへの信号が表れにくいのです(上下で打ち消し合いますので)。

僕が作るプッシュプル(PP)アンプは皆下の回路で作っています。コスト的には倍掛かり、電気的にはほんの若干劣るのに・・・・・・・。

正常に働いている時には、上の回路で大丈夫です。
でね、片方の真空管がイカレタとしますね。片方だけが働きますので、電流値は半分に減ります。
そうするとバイアス抵抗に発生する電圧も半分。此処の電圧はパワー管の暴走を防ぐブレーキみたいな物。要はブレーキが半分に減るのです。結果正常な真空管にも過度な電流が流れてしまうのです。
つまり片側がいかれると、もう片方も・・・・・・・。
そんな修理代を払わないで済むように上下のバイアス抵抗を分けているのです。

結構市販のアンプは上の回路ですので、僕が下の回路に改造したアンプは結構有ります。
ユーザーの方から音質でのクレームは一度も貰っていませんので、この程度では音質に影響がないと思います。
僕の作り方としまして、電気的にはこの方が理想的。と思っても故障した場合を考えるのですね。
理論的には良いけど故障した場合のリスク。
そう考えて作っています。
今回のアンプ。40年前に作りました。
色々と出て来そうです。



拍手[6回]


本当に暫くぶりの本職ネタ。色々とやってはいるのですが、前にアップしたよね。と言う仕事ばかりだったのですね。

今回俎上に上がったのは此のアンプ。


僕の店の開店当時を知っている方なら、懐かしいと思います。当時は工作機械も持っていませんし、知り合いの板金屋さんも有りません。
そんな時に重宝したのが、LUXキットのA3700。このキット、シャシと電源だけのキットだったのです。
一般の人がアンプを自作する時に、一番のハードルがシャシです。
真空管部分だけ別パネルに成っていて、真空管の配置も自分で決められますし、勿論お勧め回路も有って、それ用のパネルも用意されていました。
電源トランスの電圧と電流も、色々な真空管に対応出来るように成っていたのです。

そのシャシキットを利用して作ったのが此のアンプです。
EL34三結PPアンプ。僕にしては珍しいPP回路です。
当時はPP回路も色々と弄っていましたので・・・・・・。

写真でお気づきかと思いますが・・。

正常なEL34.


真空度の落ちた(空気が入った)EL34。

ガラスにひびが入り空気が入ったか、超高熱に成り(暴走)内部でガスが発生したかのどちらかです。
勿論、この真空管は使用できません。

で、老婆心ながら・・・・・。
個人の判断で真空管不良と考え、真空管の交換を僕はお勧めしません。本当に真空管だけに原因が有ったのかを見極める事の出来る方だけが真空管の差し替えが出来ます。

他に原因が有ったのに、それに気付かず真空管の交換をしますと、直ぐに新しい真空管をダメにしますし、それ以外のパーツへ負担を掛けて、結果的に高額の修理に成る場合が多いのです。

真空管の交換をしたら、アイドリング電流のチェックは最低の条件です。

特に固定バイアスのパワー管の交換には注意が必要です。


拍手[3回]